これまでも静電気は,トナープリンタなど様々な用途で利用されてきたものの,電荷が移動するため電荷密度が低く応用分野が限られていた。電荷を閉じ込めるという発想がなかったためである。もし,帯電体の製造時に大量の電荷を安定的に閉じ込めることができれば,静電気力,すなわちクーロン力を高めることができ,応用範囲も大きく広がる。

 本稿で提案する『帯電体工学』とは,大量の電荷を閉じ込めて大きなクーロン力を発生させ,それをモータや発電機などの高性能化に生かそうというものである。未知の領域で課題が多いものの,小型機器用のモータなどから開発をスタートすれば,必ず広がりがあるはずである。

山村 信幸
技術コンサルタント
1946年生まれ。熊本大学 理学部 物理学科 卒業。オムロン,カシオ計算機,韓国三星電子を経て,現在は技術コンサルタント。