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第2回:日本ではXGPがTD-LTEに

中道 理=日経エレクトロニクス
2010/08/17 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2010年6月28日号 、pp.73-74 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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前編より続く

 TD-LTEに関心を向けているのは海外の通信事業者だけではない。日本国内でも,ひそかにサービス開始を目指している事業者がある。それが,ソフトバンクである。同社は,ウィルコムの次世代PHSサービス「XGP」向けの周波数帯域である2545M~2575MHz注1)を使ったTD-LTEサービスの開始に向け,動き始めているのだ。ソフトバンクはそのために,ウィルコムから分離されるXGPサービスを提供する新会社への出資を決めている。

†XGP(extended global platform)=ウィルコムが開発していた次世代PHSの通信規格。TDD方式で10MHz幅を使い,下り最大22Mビット/秒,上り最大20Mビット/秒で通信が可能。

注1) 2545M~2555MHzは運用制限があり,2014年12月31日まで利用できない。

 複数の関係者の情報を総合すると,ソフトバンクは以下のようなシナリオで移行を目指しているようだ。まず,2010年末からTD-LTEを使った実証実験を国内で開始する。さらに,総務省に働き掛け,2011年前半にモバイルWiMAXサービスとの干渉条件の要求値を検討する。現在XGPに割り当てられている周波数帯域の近傍には,2575M~2595MHzの地域WiMAXや2595M~2625MHzのUQコミュニケーションズのサービスがあり,これらへの電波干渉を避ける必要があるためだ注2)。これがまとまれば,2011年中にもTD-LTEの商用通信サービスが始まるという筋書きである。

注2) 地域WiMAXは市区町村単位で割り当てられる。ケーブルテレビ事業者などが主にサービスを提供している。

 ソフトバンクは,総務省への利用申請に際してTD-LTEという言葉は極力使わず,名称を次世代版XGPなどとしながら進めるとみられている。こうすることで,XGPに割り当てられた帯域をTD-LTEに転用することへの批判を抑え込む。電波行政に詳しい関係者によれば「たとえ中身がTD-LTEだったとしても,現行のXGPよりも周波数利用効率が高く,近傍の周波数帯でサービスしている無線システムとの干渉条件が満たされていれば,利用が認められる」という。TD-LTEはXGPよりも周波数利用効率が高いことから,問題はないとする見方だ注3)

注3) TD-LTEが下り4×4MIMOまでを規定しているのに対し,XGPはMIMOの規定がない。このため,仕様上の周波数利用効率はTD-LTEの方が高い。

TDD通信もLTEに収斂

 多くの事業者がモバイルWiMAXからTD-LTEに移行しつつあることから考えると,TD-LTEが「TDD通信」における将来の基軸になっていくのは間違いなさそうだ。それはあたかも,FDD方式の移動通信技術がLTEに統合していった流れと同様に見える(図3)。FDDの移動通信方式ではかつて,W-CDMA方式を推進する3GPPと,CDMA2000方式を推進する3GPP2という2陣営が存在したが,現在はFDD LTEの推進という点において共同歩調を取っている。

†3GPP2=CDMA2000の発展形ネットワークを基本としたシステムの仕様を検討および作成するプロジェクト。構成団体は3GPPと同じ。

図3 TDDの通信方式もLTEに一本化へ
FDD系の技術がFDD LTEに収斂したように,WiMAXやXGPなどTDD系の技術もTD-LTEに一本化されつつある。
[画像のクリックで拡大表示]

 これと同様に,TDD系の移動通信技術は,TD-LTEに収斂することになるだろう。こうなると,さまざまな機器がTD-LTE用に開発されることになる。TDD方式のもう一つの雄であったモバイルWiMAXは,その大波の直撃を受ける。モバイルWiMAXサービスを進めていた事業者が次々にTD- LTEに移行しているのは,今後,モバイルWiMAX関連の次世代規格の標準化や,機器開発のスピードが遅くなることを見越したためだ。将来いずれかの段階でTD-LTEやその先の規格であるLTE-AdvancedがTDD方式の主流になるのであれば,早期に本命となるTD-LTEに移行しておこうと考えているのである。

†LTE-Advanced=低速移動/停止時において1Gビット/秒,高速移動時でも100Mビット/秒の伝送速度を実現することを目標に,3GPPで策定作業が進められている規格。

―― 次回へ続く ――

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