COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

最終回:究極のカメラを目指して(下)

堀切 近史
2010/08/10 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2006年4月10日号  、pp.122-123 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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前回から続く

 開発が進むにつれて携わる仲間が増え,そして多分野にわたる技術者の連携が深まっていった。

まさに集大成として…

 レンズ鏡筒の薄型化では,全長を20mmに収めるという宿題に答えるべく,あらゆる要素にメスが入る。個々のレンズは数μmオーダーで薄くなるよう再設計され,撮像素子についてはパッケージを新たに開発して1mm薄くした。モアレを防ぐ光学素子を取り除くという大胆な策にも打って出た。同等の機能を,撮影後のデジタル信号処理で賄うのである。あっちで数十μm削り,こっちで数十μm削り,合わせてようやく0.1mm薄くなる,といった進め方である。

 手ブレ補正技術も高度化が図られた。山根洋介をはじめとする新たな戦力が加わり,その効果を高める工夫が加えられていく。高域周波数成分の手ブレ補正効果を高める工夫もその一つ。手ブレの周波数は持ち方によって変わるが,それまで7Hzを基準に補正していた。これを変更し,どの周波数の手ブレ信号が来てもそれぞれに応じて位相を合わせて像を補正する仕組みを組み込んだ。

 設計段階に高い目標を掲げたために,製造段階のあちこちに思わぬしわ寄せが現れるというハプニングもあった。歩留まりの低下を招いたり,工程への負担が大きくなったりしたのである。機種リーダーを務める坂口隆や,技術開発を統括する友石啓介らは,先頭に立ってこれらの問題に立ち向かう。自ら工場に赴いて,一つ一つ対処を指示する。そして皆がここまで積み上げてきたさまざまなノウハウを注ぎ込んでいった。レンズをできるだけ薄く造りながらも製造歩留まりを低下させない成形技術や,必要最低限のトルクを出力し伝達する機構設計など,レンズから手ブレ,電子部品,半導体に至るまで,かかわったすべての技術者が全力を尽くした。手ブレ補正を搭載する薄型コンパクト機を実現するという共通の目標を胸に。

手ブレ補正搭載の薄型コンパクト機「DMC-FX7」
[画像のクリックで拡大表示]

 そして…。まさに集大成と呼ぶにふさわしい製品へと結実する。2004年8月27日,薄型コンパクト機「DMC-FX7」が店頭に並ぶ。発売後,同機はたちまち国内販売ランキングの上位に躍進し,快走する。最薄部が約19.9mmと薄い筐体,2.5型と大きな液晶画面,手ブレ補正技術――。細部に至るこだわりが,ユーザーに受け入れられた結果である。

 このヒットを契機に,松下電器産業のデジタル・カメラ事業を取り巻く環境は大きく変わった。ユーザーや競合メーカーの評価が好転する。認知度に加えて,製品への信頼感までもが一気に高まったのだ。

後を追う競合メーカー

山根洋介氏
坂口隆氏

「手ブレ補正なんて,ホントに必要なのかなぁ」――。かつて手ブレ補正技術は,技術者からこんなふうに評された。製品に搭載するとき,その必要性は必ずと言っていいほど議論の俎上に載った。とりわけ光学式は,機構部分の寸法の増大や部品コストも跳ね上がる。それに見合う価値を獲得できるのだろうか,と。

 しかし今では手ブレ補正技術の必要性を疑う者はいない。ビデオ・カメラ,デジタル・カメラの高倍率ズーム機,そして薄型コンパクト機。松下電器産業は徐々に応用先を広げつつ,その存在意義を高めていった。

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