(3)の分解能で,特に優れているのが抵抗膜方式である。これに次ぐのが,表面型の静電容量方式と超音波方式。さらに,投影型の静電容量方式と光学方式が続く。分解能が高いと,細かな図形や文字などの入力が容易になる。手書き入力が可能な携帯型ゲーム機や電子手帳は,ほとんど抵抗膜方式を採用している。

 (4)の耐久性で,特に優れているのは光学方式と超音波方式である。入力回数の耐久性はほぼ無制限といえる。これに次ぐのが静電容量方式である。さらに,抵抗膜方式が続く。抵抗膜方式は,上述のように電極同士が接触して表面が摩耗したりするため,他の方式に比べると耐久性はやや不利になる。

安価な抵抗膜方式タッチ・パネルを採用した液晶一体型パソコン(台湾ASUSTeK Computer Inc.)
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 (5)のコストについては,特殊なセンサを必要としない抵抗膜方式と静電容量方式が有利である。特に,最も多く使用されているアナログ抵抗膜方式は,電極構造が単純で,低コストを実現しやすい。一方,LEDや赤外光などの光源,およびフォトトランジスタやカメラなど受光部品を必要とする光学方式は,コストが高くなる。同様に,超音波の発信素子や受信素子を必要とする超音波方式も,抵抗膜方式や静電容量方式に比べるとコストは高い。

 (6)の入力方法も,方式によって大きく異なる。汎用性が特に高いのは抵抗膜方式である。鋭利なもの以外なら,指でもペンでも入力可能である。文字の手書き入力にも対応する。超音波式も,柔らかいものであれば,ほとんど対応する。硬いペンだと入力しにくい場合があるが,一定の柔らかさを持つ専用ペンなら十分使える。光学方式は,ある程度の大きさを持ち,光を遮蔽するようなものであれば,入力可能である。手袋をはめた指でも入力することができる。これらに対して,静電容量方式は直接的な指入力にほぼ限定される。タッチ・パネルの電極との間で容量を結合しないと,検出できないからである。

マルチタッチが得意な静電容量方式タッチ・パネル(米3M社)
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 マルチタッチについては,投影型静電容量方式と光学方式が対応する。また,マルチタッチが難しいと言われていた抵抗膜方式や超音波方式でも,対応する技術が出てきた。抵抗膜方式では,デジタル方式やマトリクス方式と呼ばれる技術で10点以上の入力に対応したタッチ・パネルを,フランスStantum社が開発した。超音波方式では,2点タッチに対応したタッチ・パネルをタッチパネル・システムズが製品化している。

 このような各種タッチ・パネルの特徴から,例えば「手書き入力をする携帯型ゲーム機や電子手帳には抵抗膜方式」「マルチタッチ対応の携帯端末には静電容量方式」「20型前後の画面を使う券売機やパソコンには光学方式」「耐久性,大画面対応,分解能が求められる公共情報端末には超音波方式」というような使い分けが行われてきた。

 ただ,各方式の進化のスピードは目覚ましく,数年前には不可能だったことが実現できるようになってきている。かつての“常識”にとらわれることなく,最新の技術進化や開発動向を常に押さえておくことが,タッチ・パネルの賢い使いこなしのカギになる。