大型化:タブレット端末,パソコン,デジタル・サイネージの市場に攻め入る

 大型化技術は,タッチ・パネルの応用機器が携帯電話機からiPadのようなタブレット端末,パソコン,デジタル・サイネージなどへと拡大していく流れの中で,開発が急ピッチで進んでいる。携帯電話機では3型程度の画面サイズだったが,タブレット端末では10型前後,パソコンでは10~20型前後,デジタル・サイネージでは40~50型前後への対応が求められるようになる。

NextWindow社の光学式タッチ・パネルを搭載した製品など。下が液晶一体型パソコン,上がデジタル・サイネージ用タッチ・パネルの展示。
[画像のクリックで拡大表示]

 先述のStantum社のタッチ・パネルは,コントローラICを1個使用した場合で10型,2個使用した場合で15~20型ほどのディスプレイに対応できるという。日立ハイテクは,既に7型以上のディスプレイに対応するコントローラICを量産中であり,2010年内には8.9型まで対応したコントローラICを製品化する計画である。

 携帯機器向けで採用実績のある抵抗膜方式や静電容量方式ではなく,独自の光学方式でパソコンやデジタル・サイネージの市場を開拓しているのが,ニュージーランドのNextWindow社である。米Hewlett-Packard Co.(HP),米Dell Inc.,NEC,ソニー,ドイツMedion社といった大手パソコン・メーカーを顧客に持ち,OEM(original equipment manufacturer)またはODM(original design manufacturer)としてタッチ・パネルを供給している。米国の大手会計事務所「Deloitte Touche」によると,2009年度の売上高は,前年度の6倍にも達したという(Tech-On!関連記事4)。

薄型・軽量化:液晶とタッチ・パネルの一体化技術が登場

 薄型・軽量化については,液晶と一体化して厚みを抑えたり,軽くしたりできる液晶とタッチ・パネルとの一体化技術が2010年後半から登場する。現在のタッチ・パネルは厚さ約1mmである。これは,iPadの厚みの約7%に相当する。外付けだったタッチ・パネル部品を一体化できれば,薄型化,軽量化が可能になる。

 液晶の画素の中にタッチ・センサ機能を組み込むインセル技術の提案は以前からあったが,歩留まりや表示性能の確保が難しく,量産化が進まずにいた。ところが,液晶パネルの上側にタッチ・センサ機能を設けて一体化する「オンセル」という新概念の導入によって難しさが緩和され,液晶パネル・メーカーによる技術開発競争が再燃している。

NEC液晶のタッチ機能付き液晶パネル
[画像のクリックで拡大表示]

 この方式は,通常の液晶パネルと製造コストがほとんど変わらないのも強みである。特に,2010年5月に開催されたディスプレイ関連最大の学会「SID」でNEC液晶テクノロジーが発表した技術は,現在商品化されているIPS液晶パネルの構造を変えずに,タッチ・パネルの機能を追加できる。同社が開発したのは,静電容量型のタッチ入力機能を一体化したIPS液晶パネル。カラー・フィルタ基板と偏光板の間の帯電防止用ITO膜を,位置検出のための電極として利用する。このITO膜から指に向かって流れる電流を位置検出に使う。液晶パネルのドライバICなどを変えるだけで,タッチ・パネルに生まれ変わる(Tech-On!関連記事5)。

 このような新世代タッチ・パネルを商品の競争力につなげることができるか。機器メーカーの企画力が問われることになる。