新世代タッチ・パネルが機器を差異化する決め手になる。両手10本の指で同時に画面をタッチしながら操作できるマルチタッチ技術,携帯電話機だけでなくパソコンやデジタル・サイネージにも対応できる大型化技術,液晶と一体化して厚みを抑えたり軽くしたりできるインセル技術やオンセル技術などである。これまではアイデア中心の段階だったが,「iPhone」のヒットや「iPad」の登場によって開発競争に火がついた。こうした新世代タッチ・パネルが2010年後半から登場する。
失敗と成功を繰り返してきたタッチ・パネル応用機器
タッチ・パネルの歴史は古い。タッチ入力を採用した「iPad」のような製品が登場したのは,今から約20年前にさかのぼる。当時は「ペン入力コンピュータ」などと呼ばれていた。先駆者として有名なのが,1990年前後に携帯機器向けソフトウエアの開発会社として活躍していた米Go Corp.である。同社は,独自のOS「PenPoint」と,これを搭載したペン入力方式の携帯型コンピュータを開発した。
その後,米Microsoft Corp.がペン入力に対応したOS「Windows for Pen Computing」を発表したり,米Apple Inc.がペン入力方式の携帯情報端末「Apple Newton」を発売したりして,注目を集めた。しかし,市場にはなかなか受け入れられなかった。
ペン入力方式の機器として,日本市場では1993年にシャープが発売した携帯情報端末「ザウルス」がヒットしたが,世界規模で初めてのヒット商品となったのは,1996年に発売された米Palm社の携帯情報端末「Palm」である。アルファベットに基づいた,独自の一筆書きの手書き入力方法が受け入れられたことが普及につながった。
その後,Palmに搭載されたOS「Palm OS」は他社にもライセンス供与され,米IBM Corp.から「WorkPad」,ソニーから「CLIE」などの携帯情報端末が発売された。
しかし,21世紀に入ると,タッチ入力端末は再び苦難の時期を迎える。新製品の発売は活発だった。2002年11月にMicrosoft社がペン入力パソコンに必要な機能を組み込んだOS「Microsoft Windows XP Tablet PC Edition」を発表したことで,大手パソコン・メーカーからいわゆる「タブレットPC」の発売が相次ぐ。
しかし,消費者には受け入れられず,その市場はわずか100万~200万台/年の規模にとどまった。タッチ・パネルへの注目は急速にしぼんでいった。