南たちはまず,TI社が供給するエンジンをそのまま使ってフロント・プロジェクタを試作した。SVGA画質(800×600画素)のDMDを使ったものだ。
試作してみて分かったのは,思った以上に光学系システムを簡素化できるということ。従来必要だったプリズムが不要で,レンズも小型にできそうだった。ひょっとすると,かなりコストを抑えられるかもしれない。
低コスト化に向くと判断
光学系システムの低コスト化を考えると,液晶プロジェクタよりDMDの方が有利――。試作した結果,そういう判断に至った。
しかし,試作機は筐体が大きく,小型とはいっても他社の液晶プロジェクタとそれほど大差はなかった。液晶プロジェクタの技術進歩が猛烈な勢いで進んでおり,それまで課題だった色ズレや,輝度の点も著しく改善していた。
「このまま製品化しても,液晶プロジェクタ陣営には勝てないな」
南はそう思っていた。
「ウチの技術を使えば,もっと小さくできるんだが…」
TI社からは光学系を含めてあまり多くの情報は伝わってこなかった。しかし実際に試作機を手掛けた南たちには,改良すべき点がくっきりと見えていた。プラスの光学技術を使えば,TI社のエンジンを利用した場合に比べ,半分程度の大きさを実現できる。プラスの開発陣はそう感じていた。
厚さ10cmのプロジェクタへ
南たちプラスの開発陣は,DMDと小型の光学系システムを組み合わせることを本気で考え始めた。そして1997年初頭に,TI社のエンジンを利用した場合に比較して半分程度の大きさの試作機を完成させてしまった。
「どうせだったら,厚さ10cm以下,重さ10ポンド以下で作れないか」