Al合金外装缶を用いたLi2次電池の開発のヒントをつかんだ雨堤徹氏は,電池の試作に取り組む。そのときソニーが「Liイオン2次電池」という新しい電池を発表した。雨堤氏はこのLiイオン2次電池にAl合金外装缶を適用,ついに試作品を完成させて米国へと旅立つ。ユーザ訪問後,シカゴの事務所に戻ると,電話のベルが突然鳴った。
「あっ,そうなんですか。珍しいこともあるんですね」。現地駐在員の夫人からの電話だった。神戸で地震があったとのニュースをテレビで見たという。ニュースになるほどだから,結構強かったのだろう。ただ,詳しい状況はわからない。 米国時間で1995年1月16日の夜。日本では日付が変わり,すでに1月17日の朝を迎えていた。
関西で地震なんて何年ぶりだろうか。日本は明け方だったっていうから,子供たちはまだ寝ていたころだろう。タンスの上からモノでも落ちて,たんこぶでも作っていなければいいが。雨堤氏は手帳を開き,次の日に行く会社のアポイントメントをチェックし始めた。
なんだか,おかしいぞ
「そろそろ起きているころかな。電話でもしてみるか」。そう思い,雨堤氏は自宅にダイヤルする。011―81―…。「カチャ」。あっ,出た。「ツー,ツー,ツー」。話中だ。おかしいな。