三洋電機が1995年に発売した角型Liイオン2次電池。Al合金を電池の外装缶に使うことで,スチール缶を使う従来品に比べて重量を30%程度軽くした。この軽さが受け,携帯電話機などで次々と採用されるようになる。このヒットをテコに三洋電機はLiイオン2次電池市場でシェアをじわじわ高め,いまやトップを争うまでになった。
軽量角型Liイオン電池の開発
目次
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最終回:おばさん軍団に助けられました
雨堤氏はすぐに協力会社にお願いし,パート・タイムで働ける人を手配してもらう。そして数日後,10人規模の「おばちゃん軍団」が雨堤氏の元に集結した。
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第9回:納期まで3カ月もない
阪神淡路大震災の混乱覚めやらぬ1995年2月上旬,雨堤徹氏は広島にあるPHS(パーソナル・ハンディホン・システム)電話機メーカに呼び出される。雨堤氏が開発したAl外装缶製Liイオン2次電池をぜひ採用したいという。拝み倒され,雨堤氏はこの依頼を受ける。納期まで3カ月。とにかく開発を急がなければ,間に合…
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第8回: どうしてこんなことしてまで
割り切れない気持ちのまま,雨堤氏は広島へ向かう。まずは淡路島からフェリーに乗って明石へ。ここで通常なら新幹線で一気に広島まで行ける。だが,大阪-姫路間はまだ新幹線が復旧していない。そこで明石から在来線で姫路まで行くことにする。電車内はごったがいしているうえ,ノロノロ運転。しかも,停車する駅ごとに数分…
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第7回:突然呼びつけられて
Al合金外装缶を用いたLi2次電池の開発のヒントをつかんだ雨堤徹氏は,電池の試作に取り組む。そのときソニーが「Liイオン2次電池」という新しい電池を発表した。雨堤氏はこのLiイオン2次電池にAl合金外装缶を適用,ついに試作品を完成させて米国へと旅立つ。ユーザ訪問後,シカゴの事務所に戻ると,電話のベル…
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第6回:またもやフタに泣かされました
雨堤氏はこれまでにも増して精力的に動き始める。「製品化という具体的な目標が決まった。まずはAl合金製の角型外装缶を手配することから始めよう」。
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第5回:大ニュースが社内を揺るがす
「Al合金の溶接はできないのでは。事例がない」。そう考えていた雨堤徹氏は,偶然見たテレビ番組でAl合金が溶接できることを知る。それを心の支えとして試行錯誤を繰り返し,最適な溶接条件を見い出した。そしてついにAl合金製の角型Li2次電池の試作品を完成させる。そのころのこと。社内を揺るがす大ニュースが飛…
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第4回:寝付けない夜
Al合金は溶接できっこないと,あきらめかけていたときのことだった。帰宅した雨堤氏は居間で横になりながらテレビをつける。「何か面白い番組はやってないかな」。リモコンでチャンネルを変えていくと,道路をさっそうと走るスポーツ・カーが目に留まった。本田技研工業が発売した「NSX」だ。どうやら,NSXの開発物…
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第3回:今度教えられたのは
「軽い電池を作りたい。そのために,電池の外装缶をなんとかして軽くできないか」。思いをめぐらせていた雨堤徹氏は,ペン立てにあったフェルトペンを見てヒントをつかんだ。フェルトペンのボディはAl合金。しかも,電池の形状に近い。「これを使えば外装缶を作れるかもしれない」との考えが浮かぶ。雨堤氏はさっそく行動…
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第2回:モヤモヤ気分が吹っ切れた
実験室に戻った雨堤氏の耳には,彼らの言葉がこびりついて離れない。「電池パック・ケースを少しでも軽くするために穴を開けた」。
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第1回:フェルトペンに教えられました
三洋電機が1995年に発売した角型Liイオン2次電池。Al合金を電池の外装缶に使うことで,スチール缶を使う従来品に比べて重量を30%程度軽くした。この軽さが受け,携帯電話機などで次々と採用されるようになる。このヒットをテコに三洋電機はLiイオン2次電池市場でシェアをじわじわ高め,いまやトップを争うま…