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ものづくり十年の計・農業,進む植物工場

第5回:既成概念に固執せず

IT導入に取り組む新福青果

2010/03/20 00:00
中山 力=日経ものづくり
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出典:日経ものづくり,2009年8月号 ,p.71 (記事は執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

前回から続く)

 最終回となる今回は、前回紹介した富士通のシステムを導入した、宮崎県都城市にある新福青果での取り組みを紹介する。日経ものづくりに不定期で掲載したシリーズ「異業種を知る」として、2009年8月号に掲載した記事である。

早朝6時半。宮崎県都城市にある新福青果の朝は早い。農場で働く作業者が次々と事務所の前に集まり,準備を進めていく。その中で,他の農場では見られない,手のひらサイズの白い装置を,作業者が身に着ける(図1)

図1●作業者が身に着けるGPS端末
作業者の1日の行動を記録する。終業後,パソコンに接続してデータを転送する。
[画像のクリックで拡大表示]

 この装置は,作業者が始業から終業までどのように移動したのか,つまり各作業者について時系列の位置情報をGPSによって記録する機能を持つ。夕方,事務所に戻ってきた作業者はGPS端末をパソコンに接続し,データを転送するのが日課となっている。

 このGPSを使った情報収集システムはまだ検証段階だが,導入の背景には新福青果の農場が広大かつ分散していることがある。現在の農場は事務所から10km以内の範囲に273カ所あり,総面積は93haに及ぶ。この広大な農場の面倒を,基本的に約5人の作業者で見ているのだ。

安定収入と定期的な休日を

 新福青果の代表取締役である新福秀秋氏は,家業だった農業を継がず,いったんは繊維メーカーに就職した。その新福氏がサラリーマン生活に見切りを付け,農業を継ごうと思い直したのは今から約30年前のことだ。「決して軽い気持ちだったわけではなかったんですが,父には『バカ』と言われましてね。だけど,当時はその意味が全く分からなくて…」(同氏)。

 両親と一緒に農業を手伝うようになって,その大変さが身に染みてくる。朝早くから日が暮れるまで,日曜も祭日もない。農業の過酷さを思い知ると同時に,「このままでいいのか」という疑問が次第に膨らんでいった。

 「両親をはじめ,多くの農業従事者がそれを当たり前と感じている。私はサラリーマンの経験があったからかもしれませんが,定期的な休日があるのが当然だと感じていたし,その日には家族サービスもしたい。しかし,これを農業に当てはめるのがなかなか難しい。天気がいい休日はドライブに行きたいと思っても,父は『こういう日こそ,雑草を取った方がいいんだ』と言うんです」(同氏)。

 実家に戻って数年後,両親が所有していた農地の一部を新福氏が任されるようになった。当初は夫婦二人で切り盛りしていたが,長女の誕生を機に,忙しいときだけ近所の人に手伝ってもらうようになった。

 すると,ある時,「近所の人から『明日は仕事があるの?』と聞かれたんです。それまでは,ほとんどいつも直前になってから仕事を頼んでいました。私自身はいつごろ頼みたいかの心づもりがありますが,頼まれる人にはそれが全く分からない。ハッとしましたね」(同氏)。

 そこで新福氏が思い付いたのが,会社組織として農業を営むことだった。農場で働く人を社員として雇用し,休日と給与を保証するのである。もちろん,自分自身に対しても。

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