地道につぶす

 何よりもまず,最初に手を打たなければならなかったのが,「絵を出す」作業である。撮影の操作をして画像が出力できる状態にする作業だ。これができないことには,何も始まらない。使ってみなければわからない不具合や,出力画像にどのようなノイズが混ざるかといった問題を洗い出せないからである。こういった意味からは,絵が出て初めてスタート地点に立ったと言えるのだ。

 国分氏は,現在あるソフトウエアを基に,片っ端から不具合をつぶしにかかった。これだけ問題が多いソフトウエアの場合,むしろ一から書き直した方が,最終的には早く開発できる場合が多い。だが,大きな問題がある。「絵を出す」までに時間がかかるのだ。とにかく絵が出なければ,ほかのグループは作業を進められない。

 ひたすら地道に,不具合をつぶしていく。連日,夜更かしを繰り返しなんとか無事に「絵が出る」状態にたどりついたのは,1997年11月の半ばだった。これでようやく,「ブレッド・ボード」上で撮影/記録といった基本的な動作が実現できるようになった。

図2 ブレッド・ボードの例
ソフトウエアの動作を検証するための試作基板。実機と同じ部品を実装しており,開発したソフトウエアをコンピュータ側の記憶装置に保持したまま動作確認を行なうことができる。国分氏はこれと似た基板を前に試行錯誤を繰り返した。写真はFinePix700の後継機種「FinePix600Z」のブレッド・ボード。(写真:本社映像部)。

 ブレッド・ボードは開発したソフトウエアをコンピュータの記憶装置に蓄積したまま,動作検証するためのボード。製品に搭載するのと同じ部品が載っており,配置や実装方法は違うものの,動作は実機と変わらない。

 「これでやっとノイズ除去が始められる。ずいぶん待たしちゃったな」

奇怪な現象

 国分氏は,ようやく動作にこぎつけたソフトウエアを,ROMに記録しハードウエア担当グループの一人である山崎彰久氏に渡す。山崎氏はソフトウエア技術にも通じており,両グループの橋渡し役を担っていた。山崎氏は国分氏からもらったROMを早速実機の基板に実装して,動作させてみた。

―― 次回へ続く ――