【図3 新型プリウス用回生協調ブレーキの油圧回路】 油圧ブースタを採用したのと、通常のESCと共通のソレノイドを多用し、低コスト化を図ったのが特徴。
図3 新型プリウス用回生協調ブレーキの油圧回路
油圧ブースタを採用したのと、通常のESCと共通のソレノイドを多用し、低コスト化を図ったのが特徴。
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 新型ブレーキシステムは、従来よりもシステムを簡略化するとともに、通常のESCと共通部品を増やしている(図3)。比較のため、従来型プリウスの回生協調ブレーキについて先に説明しておこう。

【図4 2代目プリウス用回生協調ブレーキの油圧回路】 4輪にそれぞれリニアソレノイドと油圧センサを持ち、独立に油圧を制御できるのが特徴。
図4 2代目プリウス用回生協調ブレーキの油圧回路
4輪にそれぞれリニアソレノイドと油圧センサを持ち、独立に油圧を制御できるのが特徴。
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 従来のプリウスに搭載していた回生協調ブレーキは「ECB(Electronically Controlled Brake system)2」と呼ばれるもので、ブレーキペダルを踏む力が、通常走行時は直接各輪のキャリパに伝わらない、いわゆる「ブレーキ・バイ・ワイヤ」の一種である(図4)。

 ブレーキペダルからの油圧配管は、通常は途中にある切り替えソレノイドバルブによって、ブレーキ配管から遮断されている。ドライバーが要求する制動力は、ブレーキペダルを踏む速度と、ペダルの角度をセンサにより検知して割り出す。

 一方で、モータ駆動の油圧ポンプにより作り出した油圧を、各輪に装備したリニア・ソレノイド・バルブによって制御し、必要な制動力を得る仕組みだ。

 従来型プリウスで、このようなブレーキ・バイ・ワイヤを採用したのは、ブレーキ操作時の違和感をなくすためだ。もし、ブレーキペダルと油圧回路がつながっていると、時々刻々と変化する回生ブレーキの反力が油圧配管を通じてブレーキペダルに伝わってしまう。これを避けるため、この後で説明するプリウス以外の回生協調ブレーキでも、通常走行時にはブレーキペダルと油圧回路を遮断している。

 しかし、ブレーキペダルとブレーキ配管が遮断されていると、ブレーキを踏むことによってマスターシリンダから排出されるブレーキ液には行き場がなくなるし、ブレーキペダルにも「踏み応え」がないということになってしまう。こうした問題を解消するために装備しているのが「ペダルストロークシミュレータ」(以下ストロークシミュレータ)と呼ばれる部品だ。

 これは、マスターシリンダと油圧回路の間に配置されている部品で、ばねで支持されたプランジャを内蔵している。このプランジャの移動により、ブレーキ液の移動を吸収すると同時に、ブレーキペダルを踏んだときの反力を発生させる仕組みだ。

 新型プリウスでも、こうした回生協調ブレーキの基本的な働きは同じ。ただし、小型・軽量化や低コスト化のために、大きく分けて二つの変更をしている。