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第4回:クローズドなKindleに対抗勢力,ソニーやGoogleはオープンを標榜

小谷 卓也=日経エレクトロニクス
2010/02/08 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2009年6月29日号 、p.43 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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前回から続く)

 「アンチKindle」の流れが電子書籍業界でうごめいている。Kindleは専用の書籍販売サイトに,専用の端末というクローズドなモデル。コンテンツにKindle独自の専用フォーマット「AZW」を利用し,Kindle Storeで購入した書籍データは,一部を除いて他社の端末では再生できない。その上で,比較的高い「場代」を取る。例えば,新聞ではコンテンツ販売額の 70%をAmazon.com社が徴収するという。

 このビジネスモデルに対して,世界の新聞社や出版社の中には反対の姿勢を表明する動きが出ている。ある国内大手新聞社の執行役員は,「仮にKindle が日本に進出してきても,コンテンツは提供したくない。我々は,オープンな環境でさまざまな端末にコンテンツを配信したいからだ」と語る。Adobe Systems社は「出版は多様性が重要な市場。1社による支配は望まない」(同社 EPUBlishing Business,General ManagerのBill McCoy氏)とする。

 そこで今,米国を中心に動きが活発になってきているのが,オープンな配信環境の整備である。「電子書籍市場の拡大には,オープンな標準が不可欠だ」(米大手出版社HarperCollins Publishers社 HarperMedia,Vice PresidentのAna Maria Allesi氏)。オープンな標準が整備されれば,端末が1台あれば複数の電子書籍配信サイトから書籍データを購入できる。逆に,一つの配信サイトから複数の端末向けに書籍データを販売できるというわけだ。

 このようなオープンな環境を実現するカギとなりそうなのが,米国の電子出版関連の業界団体「International Digital Publishing Forum(IDPF)」が定めた「EPUB」規格である(表A-1)。EPUBは,XMLベースで電子書籍のファイル・フォーマットを規定したもの。ファイルの拡張子は「.epub」となる。既に米国では,出版社の多くが書籍データをEPUBで配信サイトに提供しているという。Google社が2009年3月に始めたソニーの電子書籍端末向けのコンテンツ配信も,EPUBを採用する。Google社が2009年末に始める電子書籍販売サービスでもEPUBを利用するとみられる。

表A-1 EPUBとOPDSの概要
図A-1 オープン・モデルを志向するソニー
図A-1 オープン・モデルを志向するソニー
ソニーは2008年7月,同社の電子書籍端末をオープンなファイル・フォーマットである「EPUB」に対応させることを発表した。

 一方,Amazon.com社に対抗する端末メーカーであるソニーも2008年7月,同社の電子書籍端末をEPUBに対応させることを発表した(図A-1)。「我々は,オープン・フォーマット戦略に舵を切った」(Sony Electronics社の野口氏)という。

OPDSにも注目集まる

 EPUBのほかに,もう一つオープン環境の実現に向けて注目を集めている標準規格がある。「Open Publication Distribution System(OPDS)」だ(表A-1)。

 OPDSは電子書籍用のカタログ・フォーマットの規格であり,さまざまな端末向けに配信できるカタログ(Webサイトで取得できるコンテンツのリストなどを記述したもの)の実現を狙っている。「Atom Syndication Format」という標準技術を使う。

 OPDSのベースになっているのは,Amazon.com社が2009年4月に買収したLexcycle社が開発した技術。現在では同社以外に,Adobe社や非営利団体Internet Archive社などがOPDSの開発を支援している注A-1)

注A-1)Internet Archive社は,Webサイトや電子書籍,動画といった歴史的なデジタル・コンテンツを学者に提供する環境の構築を目指している非営利団体である。

 Internet Archive社 DirectorのPeter Brantley氏によると,OPDSは多数の図書館やAdobe社,Xerox社,Yahoo! 社などが参加している非営利団体「Open Content Alliance(OCA)」が開発中の,電子書籍専用のサーバー・プラットフォーム向けに重要な技術になるという。「我々は,現在より多くの電子書籍を多数の端末から購入したり,無料で入手できたりするような技術を開発している」(同氏)。具体的には,OCAは,すべての本についての入手先情報などが記述された一つのWebサイトを構築することを目指している。このWebサイトへアクセスすれば,書籍データの入手先やデータを借りられる図書館などの情報が分かるという。

―― 次回へ続く ――

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