前回から続く)

電子書籍市場に今,数多くの有力企業がなだれ込もうとしている。市場で先行するAmazon.com社とソニーは,参入を狙う多くの企業の背中を押すとともに,成功の要件を明らかにした。

 「韓国Samsung Electronics Co., Ltd.が参入してきたということは,この市場が約束されたものであることを意味するに等しい」(韓国の電子書籍端末メーカーのCEO)――。

 2009年から2010年にかけて,米Amazon.com,Inc.やソニーに続けとばかりに,名だたる有力企業が相次いで電子書籍市場に参入する (図1)。例えば,「市場の開拓よりも後追いで他社から市場を奪うのが得意」と一般に評されるSamsung Electronics社は,2009年6月から順次,韓国や北米などで電子書籍端末の発売に踏み切る。米Google Inc.は2009年末,電子書籍販売サービスを始める計画だ。同年6月に米国で開催された出版業界向けのイベントで明らかにした。米国のメディア・コングロマリットであるHearst Corp.やNews Corp.,米国最大手書店のBarnes & Noble社などコンテンツ大手各社も参戦する。このうちHearst社は,自ら電子書籍端末まで開発して市場に投入する。

図1 電子書籍市場にさまざまなプレーヤーがなだれ込む
電子書籍市場に新たに参入を図る企業の一例。2009年に入り,一気にプレーヤーが増加した。
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 米Apple Inc.が近く電子書籍市場に本格参入するというウワサも絶えない。同社のオフィスの前に,書籍を山積みにした何台ものトラックが連日のように止まってい るという逸話は,もはや業界では有名だ。同市場で先行するソニーも,「Apple社は当然やって来るだろうと思っている」(Sony Electronics社 Digital Reading Business Division, Deputy Presidentの野口不二夫氏)と待ち構える。

 これまでマイナーな存在だった電子書籍市場は,さまざまな業態の有力企業が入り乱れ,互いにしのぎを削り合う大混戦の舞台へと変貌する。