2008年第3四半期に始まった金融危機は,半導体需要の急激な低下を引き起こし,その後の半導体工場の稼働率は過去に例を見ないほどの落ち込みを見せた。さらに自動車産業の不振は,今まで安定成長を続けてきた車載半導体需要を急降下させることになる。そうしたなか,いち早く景気対策を実施した中国では民生機器向け需要が回復し,台湾の「××tek」という会社名に代表されるファブレス企業は急激に業績を回復した。

 これに対して日本の半導体メーカーの業績には,乗り遅れ感がある。これは,「安くてそこそこの性能と品質」という,今世界で最もニーズが強いジャンルにおいて,日本の半導体業界の食い込みが遅れていることによる。2009年第2四半期になると,最悪の時期は脱して稼働率は上向き,「フル稼働」という情報が入ってくるようになった。深刻な危機は去り,納期問題というありがたい問題に頭を抱えるようになった読者も多いのではないか。同第4四半期になって2番底が心配されているところではあるが,深刻な危機が去った。だからからといって,国内の半導体産業が抱える根本的な問題解決がされたわけではない。

 NECエレクトロニクスとルネサス テクノロジの統合に象徴される事業の再構築とそれに伴う工場統廃合が,大手半導体メーカーのみならず,中小半導体メーカーにおいても必要になっているのではないか。筆者は,Siファウンドリ業界に携わって15年が経とうとしている。本来ならこのような主張をする立場にはないかもしれない。しかし,この提言が日本勢復活に向けた議論を活発にすることを期待し,筆を取ることにした。

 以下,Siファウンドリ業界から見た国内半導体メーカーの特徴と,さらには半導体製造の側からみた事業再構築の必要性について,気付いた点を4回にわたって述べさせていただきたい。

世界最大の生産能力を持つ日本

 国・地域別の半導体生産能力について比較した最近のデータを見ると,世界最大の生産能力(ウエーハ処理枚数)を保有する国は日本だ(図1)。筆者は,台湾だろうと推測していたが,実際には日本が世界最大の半導体生産国である。ウエーハ径別に国・地域別の生産能力を比べると,顕著な差が出ていることが分かる。125mm(5インチ)または150mm(6インチ)においては,日本の半導体メーカーの抱える生産能力の比率が大きい。古い工場を多く保有していることが分かる(図2)。

図1 地域別の半導体生産能力
Source: The 2009 Edition of the Global Wafer Capacity Analysis & Forecast from IC Insights
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図2 ウエーハ径別の半導体生産能力
Source: The 2009 Edition of the Global Wafer Capacity Analysis & Forecast from IC Insights
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