2015年の市場規模は,2007年比で527.9%(機器),713.5%(システム/サービス),159.7%(デバイス)――。
リーマン・ショック以降の世界同時不況の影響を引きずるエレクトロニクス業界において,極めて威勢の良い予測が飛び交う市場がある。「ヘルス2.0」とも呼ばれる,エレクトロニクス技術を活用した健康管理市場だ。冒頭の数字は,同市場(国内)に関する富士経済の調査データである(図1)。
この調査における「機器」とは,健康管理対応型の携帯電話機や活動量計(ライフ・レコーダー),通信機能付き健康機器などを指す。同じく「システム/ サービス」はモバイル端末向け健康管理サービスや生活習慣改善Webサービスなど,「デバイス」は3軸加速度センサやμTAS(微細流路を形成したデバイス)などである。
国内外で参入相次ぐ
これらの市場がにわかに活気づいていることは,2009年に入ってからの参入企業の増加からもうかがえる。
例えば,パナソニックは2009年3月,「ヘルスケア向け」と銘打つパソコンを発売。同年4月には,NECとパナソニックメディカルソリューションズ,日立製作所の3社がそれぞれ,任天堂のゲーム機「Wii」と健康ゲーム・ソフト「Wii Fit」を利用した特定保健指導システムの提供を始めた。さらに同年6月には,NTTドコモが「ウェルネスサポート」と呼ぶ健康管理サービスを開始した。同社の携帯電話機を各種の健康機器と連動させて収集した健康データを,提携した健康サービス事業者に開示するというものだ。
健康管理市場に食指を動かしているのは,決して国内企業だけではない。米Intel Corp.は健康管理市場の発展を目指す団体「Continua Health Alliance」を主導するほか,米IBM Corp.と米Google Inc.は2009年2月,健康管理分野で協力すると発表した。IBM社が開発したソフトウエアとGoogle社が米国で展開するWebサービス「Google Health」を融合し,健康管理の利便性向上を図る狙いである。
これらは,ほんの一例にすぎない。同様の取り組みは,国内外で枚挙にいとまがない。