メーカーの開発体制も変化を迫られそうだ。移動体通信技術を用いる機器は今後,携帯電話機やデータ通信端末にとどまらなくなるためである(図5)。

図5 移動体通信の応用先は携帯電話機のみならず
携帯電話事業者は収入増のために,通信機能を内蔵するデジタル・フォトフレーム製品の提供を始めている。さらに,携帯電話以外のサービスに着目したMVNOが登場することで,移動体通信技術を利用する製品分野は大きく広がる。

携帯電話機以外にも市場

 携帯電話機が潜在ユーザーにほぼ普及した市場では,加入者の大幅な増加は見込めない。そこで携帯電話事業者は,既存ユーザーに複数の契約を促す取り組みを進めることになる。その象徴が,ソフトバンクモバイルやNTTドコモが2009年に発売した,3G通信機能内蔵のデジタル・フォトフレームである。携帯電話の契約数を増やせる可能性を持った新しい機器の採用を,携帯電話事業者は前向きに検討するだろう。

 MVNO(仮想移動体通信事業者)の登場も,移動体通信機能を内蔵する機器の広がりに拍車を掛ける。国内では認証やセッション管理などをMVNOが行う「レイヤー2接続」が実現するなど,さまざまなサービス形態が生まれる土壌が整った。また米国では,移動体通信料金をコンテンツの売り上げで肩代わりする米Amazon.com, Inc.の電子書籍端末「Kindle」のような事業形態も登場している。携帯電話事業者以外のサービス提供者に向けた移動体通信機器の市場が急拡大する可能性は高い。

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