国内の携帯電話機メーカーは,厳しい状況に直面している。2007年末に販売奨励金が廃止されたことなどの影響で,2008年度の国内大手3事業者の携帯電話機販売台数は,前年度比23.4%減の3963万台まで落ち込んだ注1)。2009年度は,さらに減る見通しだ(図1)。
注1) JEITAが公表する携帯電話機の出荷実績では,2007年度の4954万台に対し,2008年度は30.0%減の3464万台となっている。JEITA の実績は,海外メーカーの出荷台数を含まないほか,販売台数を公表していないイー・モバイル向け端末の出荷台数を含む。これが値の差に表れたとみられる。
これに伴い,業界再編も進んでいる。2008年には三洋電機が京セラに携帯電話事業を譲渡したほか,三菱電機が携帯電話事業から撤退。2009年9月にはNECとカシオ計算機,日立製作所が携帯電話事業を統合することを発表した。
逆風にさらされる国内の携帯電話機メーカーだが,2010年には挽回のチャンスが訪れそうだ。携帯電話機市場が転換点を迎えているからである。その変化は大きく三つある。「スマートフォン」などと呼ばれる高機能な携帯電話機のニーズが世界で高まり始めたこと,LTE(long term evolution)の導入が始まること,そして携帯電話機以外の移動体通信端末の市場が生まれつつあることだ。これらの変化に応じた製品や事業モデルをうまく作り上げたメーカーが,次の主役となる。
水平分業でも独自色を出す
世界の携帯電話機市場は,再び成長期に入ろうとしている。米Gartner, Inc.の調査では,2008年の「リーマン・ショック」後,販売台数が前年同期を下回る状況が続いていたが,2009年第3四半期は前年同期を上回った(図2)。その中で成長著しいのが,スマートフォン分野である。2009年1~9月で見ると,全体が前年同期比4.7%減の8億6411万台だったのに対し,スマートフォンは前年同期比17.0%増の1億1843万台だった。高機能な携帯電話機に対する要求が,世界で高まっているようだ。
日本の携帯電話機メーカーが世界に目を向けたときに欠かせないのが,事業モデルの転換である。携帯電話事業者の新サービス導入計画に沿うように携帯電話機を開発する日本型の事業モデルは,世界共通ではないからだ。とはいえ,米Apple Inc.のような垂直統合型の事業モデルで世界に打って出ることは,容易ではない。国内メーカーの多くは,米Google Inc.が開発する「Android」などのソフトウエア・プラットフォームを活用する水平分業型の事業モデルに移行することになるだろう。