(前回から続く)

 「化石燃料から非化石燃料への転換に至る過程には,新たな経済成長の可能性が十分にあるだろう。今,その道を誰が最初に見つけるのかの競争に入っている。その中で,環境先進技術に優れた日本の企業は,将来的なポテンシャルが非常に高い」(民主党 参議院議員で外務副大臣の福山哲郎氏)。

 温室効果ガスの排出量削減が,世界全体で喫緊の課題となっている。こうした「低炭素社会」の実現に,産業界が果たす役割は極めて大きい。とりわけエレクトロニクス関連企業には,電源制御技術や発電効率向上技術,消費電力低減技術など,さまざまな点から期待が寄せられている。

 中でも注目が集まるのが,再生可能エネルギーの大量導入を実現するためのエレクトロニクス技術である。太陽光発電や風力発電など発電デバイス関連の要素技術はもちろんのこと,それらを使いこなすための電源システム,送電技術などの特性向上には,エレクトロニクス・メーカーの取り組みが欠かせない。

 日本のメーカーは,太陽電池セルやインバータ機器など,世界的に競争力の高い技術や製品を持っている。これまでは主に日本市場向けに展開してきたこうした強みを,世界の市場で発揮する絶好の機会が訪れているのだ。

表1 世界の再生可能エネルギー導入計画

再生可能エネルギー導入が拡大

 実際,再生可能エネルギーの導入量は,世界で急速に拡大することになる(表1)。例えば米国は,2025年までに全電力供給量の1/4を再生可能エネルギー由来に転換する。同国の環境先進地域であるカリフォルニア州では,2020年までに全電力供給量の33%を再生可能エネルギーに切り替える方針だ。「あと10年で,再生可能エネルギーの導入量を,現状の2.5倍まで引き上げる」(米国カリフォルニア州 知事のArnold Schwarzenegger氏)。

 新興国でも,再生可能エネルギーへの関心は高い。中国は2020年までに全電力供給量の12.5%を,そしてインドは2012年までに12%を再生可能エネルギー由来にするとしている。

 日本も導入に積極的だ。日本政府は,国内の太陽光発電の導入量が2005年度比で,2020年度に約20倍,そして2030年度には約40倍に高まるとの見通しを明らかにしている(図1)。風力発電に関しても,2030年度には2005年度比で約6倍の導入量となる可能性がある。

図1 国内の太陽光発電は導入拡大へ
太陽光発電は2005年度比で,2020年度に約20倍,そして2030年度には約40倍,導入される可能性がある。数値はいずれも最大導入時のものである。(図:経済産業省の『長期エネルギー需給見通し』を基に本誌が作成)