(前回から続く)

 テレビの販売は目下,リーマン・ショック以降の世界同時不況の影響から立ち直りつつある。その大きな要因となっているのは,「日本のエコポイントや中国の家電下郷注1)など,政府が仕掛けた消費刺激策」(シャープ 代表取締役 兼 副社長執行役員の濱野稔重氏)である(図1)。

注1) 家電下郷は農村を対象にした中国政府の消費刺激政策で,指定されたテレビなどの家電製品を購入すると代金の13%を政府が補助する。

図1 エコポイントで国内テレビは絶好調
国内の薄型テレビの出荷台数を,2006年9月の出荷台数を1としてプロットした。テレビの国内出荷は毎年,3月と年末に大きなピークがあるが,「エコポイント制度」が始まった2009年5月以降の需要は,例年と異なるカーブを描いた。データはBCN調べ。

エコポイントで絶好調

 例えば,日本国内では2009年5月以降,テレビの出荷台数が前年同月の1.4~1.6倍に伸びている。テレビの販売は3月と12月にピークがあり,夏期は落ち着くのが通例だったが,「2009年は,7月の出荷台数が3月に並んだ。明らかにエコポイントの効果」(BCN アナリスト 道越一郎氏)。

 40%強のシェアを持つ首位のシャープも,2009年10月29日に開いた2009年度第2四半期の決算報告の席上で,国内テレビ販売が2009年4~6月は前年同期比18.2%,7~9月は28.9%と大幅に伸びたと明らかにした。同社はエコポイント制度が終了する2010年3月までの下期には,「前年同期比で49.0%の需要増を見込む」(シャープの濱野氏)とする。

 好調な販売に一息つく一方で,メーカーを悩ませているのが技術面での「次の目玉」の不在である。ソニー,パナソニックなどが力を注ぐ「3次元(3D)映像対応テレビ」が,その一つの候補であるのは確かだ。2009年10月6日~10日に開かれた展示会「CEATEC JAPAN 2009」でも,3Dテレビは注目を集めた。だが,今のところ,大きな需要を喚起する起爆剤になり得るかどうか未知数である。