(前回から続く)

 半導体業界が,2008年秋の「リーマン・ショック」以降続いてきた長く暗いトンネルから抜け出しつつある。米Semiconductor Industry Association(SIA)の発表によると,2009年8月における半導体の世界売上高(3カ月の移動平均値)は190億6000万米ドルと,対前月比で5.0%増だった(図1)。6カ月連続して,前月よりも売上高が増加した。

【図1 回復に向かう世界半導体市場】 SIAの調べによる単月の世界半導体売上高(3カ月移動平均値)の推移。2009年8月は対前年同月比では16\.1%減,前月比では5\.0%増だった。
図1 回復に向かう世界半導体市場
SIAの調べによる単月の世界半導体売上高(3カ月移動平均値)の推移。2009年8月は対前年同月比では16.1%減,前月比では5.0%増だった。
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 2009年8月の売上高を前年同月と比べた場合は16.1%減と,まだリーマン・ショック以前の水準には戻っていない。それでも,2009年7月の対前年同月比18.2%減に比べると2.1ポイント改善しており,底打ち感が鮮明になってきた。「ロジックLSIの受注は2009年2月を底に回復基調にある」(富士通マイクロエレクトロニクス 代表取締役社長の岡田晴基氏),「半導体市場の底は2009年1~3月。既に回復に向かっている」(東芝執行役上席常務 セミコンダクター社 社長の齋藤昇三氏)状況である(図2)。

図2 受注は2009年2月を底になだらかに回復
富士通マイクロエレクトロニクスのロジックLSIの受注状況を見ると,2009年2月を底になだらかな回復傾向に転じている。

 実際,半導体メーカー各社の業績は着実に上向いている。エルピーダメモリは,2009年7~9月期に約5億円の営業利益を確保し,8四半期ぶりに黒字転換したことを2009年10月15日に発表した。パソコンやサーバー機向けDRAMの価格が同四半期に大幅に上昇したほか,生産性の向上が寄与し,2009年4~6月期の423億円の営業損失から,収益が大幅に改善した。