(前回から続く)

 Liイオン2次電池の電極は,活物質や導電材などを混ぜたスラリー(塗料)を金属板(正極はアルミ箔,負極は銅箔)に塗布している。そのため,スラリーを製造するための混練工程がある。現状では,大型タンクに材料を投入し,3軸のミキサでかき混ぜるバッチ式と呼ばれる混練工程が主流である。製造装置メーカーであるプライミクスは,バッチ式ではなく,連続処理が可能な混練工程「CDMプロセス(Continuous Dispersion Mixing Process)」を提案している。バッチ式はスケール・アップに「もはや限界がある」とする,同社 常務取締役 営業統括 電池デバイス対策部 PEACE 部長の飯田和彦氏に大容量Liイオン2次電池の動向と今後の方向性について聞いた。(聞き手:狩集 浩志=日経エレクトロニクス)

――連続処理が可能なCDM Processの利点は何か。

 当社は1991年に,Liイオン2次電池向けにバッチ式の3軸混練装置を初提案した会社だ。だからこそ,バッチ式の長短を良く分かっているつもりだ。Liイオン2次電池は多セル化が進み,バラつきがないセルを製造するために,より均質な電極材料が求められている。加えて,大幅なコストダウンを図るためには,現状のバッチ式では限界があると考えている。

 正極材料では,LiCoO2だけでなく,さまざまな材料が登場し,より細かい粒子径で均一なものを必要としている。現状では大量生産に伴って混練工程をスケール・アップする中で,非常に大型のタンクを用いて製造するようになっているが,細かな粒子径の均質な材料を製造するには向いていない。製造コストの観点でも,大型のタンクをいくつも増設していく方法では製造コストの大幅な低減は難しいだろう。現状のバッチ式の5~10時間かけて混練する方法が最適とはとても思えない。

 我々は1997年に開発した高速旋回型ミキサ「フィルミックス」を基に,Liイオン2次電池の混錬工程を連続処理できるシステム「CDMプロセス」を開発した(Tech-On!の関連記事)。同システムは,プレミキサとフィルミックス,貯蔵タンク(コンディショニングタンク)から成る(図1)。フィルミックスを用いることで,微粒子が均一に分散し,粘度の再現性が高いスラリーを連続で製造できる。

図1 CDMプロセスの基本構成