2007年も押し詰まった12月29~31日。東京ビッグサイトで世界最大の同人誌即売会「コミックマーケット(コミケ)73」が開催された。ここに初出展にもかかわらず,多くの来場者でにぎわう企業ブースがあった。クリプトン・フューチャー・メディア(以下,クリプトン社)の展示ブースである。同社は,2007年8月に発売され,大きな話題となった歌声合成ソフト「初音ミク」のメーカーである。
「初音ミク」の開発
目次
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最終回:みんなのミクになってみた(下)
とはいえ,作品の多くは誰でも作れるような簡単なものである。プロが作るような高度な作品が必ずしも人気になるわけではない。「素人っぽい作品でも面白ければ人気になる。こうした作品なら自分でもできそうだと思い,参加ユーザーが増える」(ドワンゴ ニコニコ事業部 第一セクション セクションマネージャーの中野真…
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第5回: みんなのミクになってみた(上)
「先生なにやってんすか」「野尻仕事しろ」─。ニワンゴが運営する動画共有サイト「ニコニコ動画」にこんなコメントが飛び交う動画が投稿されたのは,2007年11月25日のことだった。画面は慣れた手つきで電子工作キットを組み立てる様子を映し出している。そして,完成したキットの筐体に「初音ミク」のイラストを…
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第4回:コア・ユーザーはあえて狙わない(下)
力強い助っ人を得た開発チームは,まず声優の選考を始めた。基準は,「VOCALOID2に適した声で,かつかわいらしさを強調した声」(佐々木)だった。ただし極端な「アニメ声」の声優は除外した。現実感がなさすぎると考えたからだ。
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第3回:コア・ユーザーはあえて狙わない(上)
「アニメとかマンガ好きなの? じゃあ,この人を知ってますか?」「もちろん。とっても有名な声優さんですよね」──。雪の札幌。クリプトン・フューチャー・メディア(以下,クリプトン社)の入社面接に現れた若い女性に,同社代表取締役の伊藤博之は手にした雑誌の写真を指さしながら聞いていた。喜々としてアニメやマン…
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第2回:出会いは着メロから(下)
コンピュータに歌わせる─そう志した剣持が,後にVOCALOIDと名付けられる技術の開発に着手したのは2000年3月である。当時既に,サンプリングされた歌声でメロディを奏でられる機器や技術はあったが,「歌詞を載せて歌う」にはほど遠い代物だった。
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第1回:出会いは着メロから(上)
2007年も押し詰まった12月29~31日。東京ビッグサイトで世界最大の同人誌即売会「コミックマーケット(コミケ)73」が開催された。ここに初出展にもかかわらず,多くの来場者でにぎわう企業ブースがあった。クリプトン・フューチャー・メディア(以下,クリプトン社)の展示ブースである。同社は,2007年…