軌道計測の苦労

図1 従来の軌道計測
5人一組で,手作業で実測する。写っていない2人は記帳と監視を行っている。

 この,高い精度と頻度。それを実際に軌道にまたがるような(と言ってもよいくらいの)作業姿勢で,丹念に細心に,しかも人が行っているというのだから驚いた。

 驚いたなんて失礼な言い方だが,けなしているのではない。そんな苦労をいとわないやり方を,営々と続けていることに驚いたという意味だ。しかし,あえて言わせてもらうと,そのようなやり方では計測するのに立ったり座ったりの繰り返しだし,何より高頻度でしょっちゅう計測するのが本当につらいのではないかと心配になってしまうのだ。筆者もビックリした一人だが,多分,そう思う人は多いだろう。作業者が3人一組で,水糸と治具を使って実測しているのである。加えて,計測したデータを記帳する者1人と,安全に作業できるよう,運行している車両を監視する者1人を合わせると,5人一組になる。人員も大変だが,その作業たるや長年にわたり,よくもまあ,そんなご苦労をしてくれたものだと感心してしまう(図1,2)。

 ちなみに従来の計測方法では,在来線の場合は軌道を5mごとに,新幹線の場合には40mごとに計測していくのだそうだ。いずれも中間点の通り(高低,水準)と軌間,それにねじれ(平面度)を先ほどの道具を使って計測するのだが,その精度はおおよそ1mm。それを在来線の場合で,1グループが毎回200~300m計測するのだ。300mを計測するには,少なくとも30分以上かかる,厳しい作業である。

 もちろん,このような保線技術があってこそ我が国の鉄道事業が成り立ち,多くの旅人を満足させてきたのは事実だし,それを否定する気はさらさらない。むしろ褒めてあげたい気持ちの方が強いのだが,ハイテクな計測技術を導入して自動化しようなどとは考えなかったのだろうか。必要なことだから大変でもやるしかない,そう言われればそうなのだが,そこに新たなニーズがあるのではないかと思うのだ。

図2 使っている治具
水糸に添えて位置を確保し,正確に測る。

安全・正確・快適のために