幾何特性は全部で19
幾何公差には形状,姿勢,位置,振れの4種類に対して全部で19の特性が設定されている。この特性を指定するのが公差記入枠の左端の区画内に記入する「幾何特性記号」だ。4種類の公差はそれぞれ以下のような意味を持つ。
▼形状の公差:幾何学的に正確な形状に対するバラつきの許容限度の領域を表すもので,六つの特性がある。形状の公差にはデータムを用いない。(図4)
▼姿勢の公差:五つの特性があり,データムに関連した幾何学的に正確な姿勢に対するバラつきの許容限度の領域を表す。(図5)
▼位置の公差:データムに関連した幾何学的に正確な位置に対するバラつきの許容限度の領域を表すのが位置の公差。六つの特性がある。(図6)
▼振れの公差:二つの特性があり,データムを軸にして部品を回転させたときの表面の振れの度合いに対するバラつきの許容限度の領域を表す。(図7)
その形を見ても分かるように,真直度は直線,平行度は平行な二つの線,位置度は穴とその中心線といった具合に,幾何特性記号は,その意味を図形化したアイコンとなっている。幾何公差を指定する際には,部品の機能的要求に応じてこの19種類の中からいずれかを指定する。
ただし,同心度と同軸度の特性記号は同じであるため,使用の際には注意が要る。線の輪郭度と面の輪郭度は,データムの設定次第で形状や姿勢,位置の規制を使い分けることになるため,これにも注意が必要だ。
また,幾何公差は,一つの形体に一つの特性を指示する場合もあれば,より厳密に管理するために複数の特性を設定する場合もある。複数の特性を指示した場合,公差の種類に応じて公差値の大小が決まる。つまり,形状の公差よりも姿勢が,姿勢の公差よりも位置の公差が常に大きくなるよう設定しなければならないのだ。
形体に位置度や輪郭度,傾斜度を適用する際には,位置や姿勢,輪郭を決めるために「理論的に正確な寸法(距離を含む)」を使わなければならない。これは,バラつきのない図面上の理想的な寸法値で,公差域をどこに置けばよいかという基準となる。付加記号の一つとして扱われ,長さおよび角度寸法を長方形の枠で囲むことによって表す(図8)。
この寸法は「基準寸法」であり,長さや角度に対する「±」の長さ・角度寸法公差が適用されない。逆に言うと,四角で寸法を囲まないと「±」の公差が適用されるため,幾何公差の解釈に矛盾を生じる場合がある。