COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

第5回:蘇生したプロジェクト,「香港」に賭ける(上)

浅川 直輝
2009/12/01 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2007年6月18日号 、pp.107-109 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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(前回から続く)

 1992年8月,非接触ICカードの研究開発プロジェクトは,ソニー社内でお蔵入りになった。

 最後の一人になるまで研究を続けていた日下部進にも,もはや過去を振り返る余裕はなかった。新たに与えられた研究テーマ,無線LANの高速化に没頭する毎日だった。

「FeliCa」開発を主導した伊賀章氏。現在は,ソニー コーポレート・エグゼクティブ SVP,情報技術研究所 所長を務める。(写真:山西 英二)

 残暑の熱気もようやく和らいだ10月。日下部の机の前に,上司の伊賀章がふらりと現れた。何だろう。新しく買ったラジコン・ヘリの自慢かな?

 「あのさ。非接触ICカードの研究,再開することになったから。日下部君,よろしくね」

 「…えええ!?」

もう一度挑戦してみろ

 一度は消滅した非接触ICカードのプロジェクトを復活させたのは,当時ソニーの社長だった大賀典雄の鶴の一声だった。

 非接触ICカードを使った入退出管理システム事業から撤退したことを聞き付けた大賀は,取締役会で吼えた。

 「始めてまだ2年もたっていない事業で,早々と撤退を決めるとは何事か!もう一度挑戦してみろ!」

 この指令は,直ちに事業部に伝わり,まず入退出システム事業の復活が俎上に載る。議論はすぐに行き詰まった。元々この事業が失敗した原因の一つは,電波の干渉がひどくてシステムの誤動作が多かったこと。これが解決しない限り,事業再開はあり得ない。事業部は「非接触ICカードの技術を完成させることが先決」との結論に達した。この結果,研究開発の責任者だった伊賀に「非接触ICカードの研究開発を再開せよ」との指令が下ったのである。プロジェクト中止から,わずか2カ月。日下部が呆気にとられるのも無理はなかった。

 「じ,じゃあ無線LANの研究は,どうするんですか。結構進んでるのに」

 「そうだなあ。まあ,段階的に閉じなきゃあかんわなあ」

 伊賀は涼しい顔でさらりと言う。

 こうして,非接触 ICカードの開発プロジェクトは息を吹き返した。

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