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HOMEスキルアップマネジメントバイオプラスチック最前線 > 第4回:自動車の内装部品に使える耐熱性を実現したマツダ

バイオプラスチック最前線

第4回:自動車の内装部品に使える耐熱性を実現したマツダ

  • 富岡 恒憲,高野 敦=日経ものづくり
  • 2009/10/14 00:00
  • 1/1ページ

 非常に高い耐熱性が要求される自動車において,内装用の射出成形部品に適用可能なポリ乳酸(PLA)を開発したのが,マツダを中心とする広島県内のグループである。マツダは,この技術を活用した部品を,水素ロータリエンジンとモータを組み合わせて走るハイブリッド車「プレマシーハイドロジェンREハイブリッド」に搭載した。

 前出のプレマシーハイドロジェンREハイブリッドにおいて,PLA製としたのはグローブリッド,シフトパネル,ロアパネル,センターコンソール,水素タンクカバーなどだ()。PLAを自動車の内装部品に使う事例は,以前からある。しかし,それらはプレス成形で造れるもの(スペアタイヤカバーなど)や,軟質のもの(フロアマットなど)がほとんど。射出成形部品への適用は難しかった。サイクルタイムを量産レベルとしながら,自動車の内装部品に求められる耐熱性(100℃以上)と耐衝撃性(JIS K 7110のアイゾット衝撃強さで7kJ/m2)を両立できなかったからだ。

図●PLAを使った内装用の射出成形部品
(a)がグローブリッド,シフトパネル,ロアパネル,センターコンソール(写真では一体に見えるがそれぞれ個別の部品),(b)が水素タンクカバー。

強固な結晶構造で耐熱性が向上

 マツダらは,この課題の解決に挑んだ。具体的な策は,PLAの結晶化促進のための核剤を導入し,その核剤に高融点のプラスチックを使うこと。核剤によってPLAの結晶化度を上げれば耐熱性が増し,結晶化速度も上がるので成形時間も縮まる。しかも,その核剤の融点が高いとなれば,それも耐熱性向上に寄与する。

 マツダらが目を付けたのは,有機系フィラ。しかも,石油系プラスチックではなく高融点のPLAだ。PLAには分子の形が鏡像の関係にあるL体とD体の2種類があり,これらが結晶化の過程で対になると強固な結晶構造(ステレオ・コンプレックス構造)が形成されて融点や耐熱性が高まる。

 実際に使ったのは,L体が主体のPLAにD体の乳酸とでんぷん質を共重合させたもの。これを溶融し,射出成形の冷却過程でステレオ・コンプレックス構造のPLAを析出させ,それらを核に結晶化を促進させる。共重合体は事前に触媒などを使いながら反応器の中で造っておく。こうした工夫によって,耐衝撃性を損なわずに耐熱性を高めた。耐衝撃性はアイゾット衝撃強さ(JIS K 7110)で13kJ/m2まで向上した。

ポリプロピレンもバイオマスで

 内装部品に多く使われている石油系プラスチックのポリプロピレン(PP)に関しても,独自にバイオマス化を進めようという構想がマツダにはある。具体的には,広島大学や産業技術総合研究所と共同で,間伐材や稲わらなどからPPを生成する技術の開発に着手した。2013年に自動車の内外装部品として実用化可能な技術を確立することを目指す。

 自動車メーカーであるマツダが材料の開発に乗り出すのは,ブラジル主導でバイオPPのサプライチェーンが構築されつつあることに対するリスク分散でもある。原料として,サトウキビではなく間伐材や稲わらを想定しているのも,ブラジル以外での調達の可能性を探ろうとしているからだ。加えて,可食原料からバイオプラを生産している現状から脱却するために,非可食原料のバイオプラ生産技術をいち早く確立したいという意向もある。

本シリーズは,日経ものづくり2009年8月号特集「こんなに使えるバイオプラのすべて」(pp.36-61)を大幅に加筆・修正したものです。(記事は同特集執筆時の情報に基づいており,現在では異なる場合があります)

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