(前回から続く)

参入障壁が下がる

 健康管理市場を目指す多くのエレクトロニクス企業にとって,Continua Health Allianceのような標準化されたプラットフォームの魅力は,大きな投資負担なしに参入が可能になることだろう。設計ガイドラインに対応させれば,自らの得意な領域で製品やサービスを投入するだけで,それが健康管理システムの一翼を担えるようになるからだ。自ら大きな労力を講じて,一連の健康管理システムを一から作り上げる必要はない。複数の国内機器メーカーの技術者は,「設計ガイドラインの存在は非常に大きい。健康管理市場への参入障壁が低くなった」と歓迎する。

 このため,設計ガイドライン第1版の完成は,健康管理市場に数多くのエレクトロニクス企業がなだれ込む一つのキッカケになるだろう。2009年2月に東京で開催された記者会見で明らかになった,14社のエレクトロニクス企業による製品やサービスなどの開発計画も,まさに設計ガイドライン完成を受けての取り組みにほかならない。

 この14社のうち,例えば富士通は,「2009年秋冬モデルのパソコンで,Continua対応品の投入を検討している」(同社)とする。高齢者などに向けて同社が既に発売している「らくらくパソコン」を改良して開発する計画だ(別掲の「健康で『Next Billion』にパソコンを」参照)。

 東芝は,設計ガイドラインが採用するBluetoothの規格に準拠したBluetoothスタックを開発する。「これがなければ,Continua対応の無線通信機能を備えた製品は出てこない」(同社)と,積極的に提供していく考えだ。フリースケール・セミコンダクタ・ジャパンは,設計ガイドラインに基づくUSBスタックを搭載した8ビットおよび32ビットのマイクロコントローラを開発し,2009年7月にサンプル出荷を始める予定である。

 もちろん14社以外にも,さまざまな動きが出てきている。前回の冒頭で示したIBM社とGoogle社の健康管理分野での協力も,Continua Health Allianceと無関係ではない。IBM社が開発したソフトウエアは,Continua Health Allianceの協力を得たもの。このソフトウエアを利用して,健康機器などで取得したデータをGoogle社のデータ管理サービス「Google Health」で自動的に管理できるようにする。その際のデータのやり取りは,Continua Health Allianceの設計ガイドラインに基づくとみられる。

走りながらサービスを育てる

 Continua Health Allianceのような標準化されたプラットフォームが存在すれば,各社はそれぞれの得意分野で勝負できる。しかし,利用者にとってみると,一連の健康管理システムがそろっていなければ,満足に使いこなせない。設計ガイドラインは発行されたばかりであり,利用者が選択できるほど十分なContinua対応の製品やサービスなどが出そろうのには,しばらく時間がかかるだろう。