ガイドライン第1版が完成

 (1)の標準化されたオープンなプラットフォームについては,今後,幾つかの動きが出てくる可能性がある。しかし,しばらく主役を務めることになりそうなのが,既に大きな動きとなって走りだしているContinua Health Allianceだろう。

 2006年6月に設立されたContinua Health Allianceは,Intel社のほか,韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.,フィンランドNokia Corp.,オランダRoyal Philips Electronics社,Google社,パナソニック,シャープなど,国内外の多くの大手エレクトロニクス企業が名を連ねる。健康機器と電子機器を相互に連携させ,測定した健康データをインターネット上のサービスなどと簡単に接続できる仕組みを目指し,必要となる設計ガイドラインの策定を進めてきた1)

 この設計ガイドラインの第1版が,2009年1月にようやく完成した。記事の冒頭で示した,Continua Health Allianceが2009年2月に東京で開催した記者会見は,設計ガイドライン第1版の完成を公に発表する場でもあったのだ注2)

注2)この会見の場でContinua Health AllianceのExecutive DirectorであるChuck Parker氏は「世界が直面する高齢化などの課題に真っ先に直面するのが日本だ。世界の中で,健康管理のニーズが最もある。しかも,ブロードバンドのインフラが整っており,健康管理市場に参加できるプレーヤーも多い」と語り,まずは日本市場から大きな動きが始まるとの認識を示した。今後は,世界にもこうした動きが広がり,健康管理市場は「200億~1000億米ドルの規模になる」(Parker氏)と鼻息が荒い。

 設計ガイドラインは,通信規格の実装方法などを規定したもの。例えば,図4に示した通り,無線の場合はBluetooth(Health Device Profile Specification),有線の場合はUSB(Personal Healthcare Device Class Specification)を使う。やり取りする健康データの通信形式(データ・フォーマット)には,医療機器向けの通信仕様だったIEEE11073を健康機器向けにアレンジした規格を用いる。血圧計や体温計,体重計など,健康機器の種類ごとに異なるデータ通信形式が定められている。

【図4 無線はBluetooth,有線はUSB】 Continua Health Allianceが策定した設計ガイドラインの第1版では,健康機器とデータ管理機器を相互連携させるための通信規格が規定されている。(図:Continua Health Allianceの資料を基に本誌が改定)
図4 無線はBluetooth,有線はUSB
Continua Health Allianceが策定した設計ガイドラインの第1版では,健康機器とデータ管理機器を相互連携させるための通信規格が規定されている。(図:Continua Health Allianceの資料を基に本誌が改定)
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図5 Continua対応第1号機が登場
図5 Continua対応第1号機が登場
Nonin Medical社が開発したパルス・オキシメーターは,Continua Health Allianceの設計ガイドラインに対応した第1号機である。

 このガイドラインに沿い,相互接続性が認証された機器などは,いわゆる「Continua対応」として,専用のロゴマークが張り付けられる。Continua対応であれば,利用者はどんな企業の機器やサービスなどでも自由に組み合わせて使えるようになる。既に,Continua対応の第1号機も登場している。米Nonin Medical,Inc.が開発したパルス・オキシメーターがそれである(図5)。

†パルス・オキシメーター=指などに装着して,血中酸素飽和度や脈拍数などを計る機器。

参考文献
1) 小谷ほか,「つながる健康機器に電機が集まる」,『日経エレクトロニクス』,2007年7月2日号,no.955,pp.47─71.

―― 次回へ続く ――