Wii Fitに続け

 第2の側面である次のメシの種としての魅力は,ITツールを活用した新たな健康管理への社会的なニーズの高まりに裏打ちされている。さらに最近では,100年に1度ともいわれる未曽有の経済不況が,健康管理市場の存在を一層際立たせている。多くのエレクトロニクス企業が既存事業の閉塞へいそく感に覆われている中,新たな分野への展開を模索する企業の期待を一身に集めているのだ(図2)。「我々の業界にとって唯一残された『宝の山』が,健康管理分野だろう」(ある国内機器メーカーの技術者)といった声は,あちらこちらから聞こえてくる。

 健康管理分野への期待感を最近になってグッと高めた存在として,任天堂のWii Fitの成功も見逃せない。国内では2007年12月の発売以来,300万本以上を売り上げる大ヒットを記録。世界でも,計1400万本以上を販売している。特筆すべきは,Wii FitがWii本体の購入を促すキッカケになっているケースが多いこと。ある調査によれば,Wii Fit購入者の40%以上は,Wii FitとWiiを同時に購入しているという(図3)。健康管理というキーワードが,既存の製品やサービスのユーザー層を広げたり,新たな製品ジャンルを構築したりできる可能性を,Wii Fitは図らずも証明したのである。

タイトル
図3 「健康」でユーザー層を広げる
任天堂の「Wii Fit」は,「Wii」本体の購入を促す役割を担っている(a)。健康管理を製品/サービスに取り込むことで,新規ユーザーの獲得などに結び付く可能性がある(b)。

プラットフォームは
「オープン」か「クローズド」か

 数多くのエレクトロニクス企業がなだれ込もうとしている,ヘルス2.0などと呼ばれる健康管理は,健康データを計るための機器だけでなく,そのデータを管理するための電子機器やWebサービス,計測したデータに基づいて利用者にアドバイスする指導サービスなどを組み合わせて,初めて成り立つ。つまり,さまざまな企業が持つノウハウを組み合わせた一連の健康管理システムを構築することが欠かせない。

 このような健康管理システムの構築に向けたエレクトロニクス企業の動きを見ていくと,大きく二つのアプローチに分けられる。すなわち,(1)標準化されたオープンなプラットフォームをベースに健康管理システムを構築する,(2)特定の製品や企業を中心としたクローズドなプラットフォームの中で健康管理システムを構築する,である。