「健康管理はエコと似ている」

健康管理市場に対して,国内外の数多くのエレクトロニクス企業が熱い視線を送る背景には,二つの側面がある。第1は,この分野への注力を社会的使命と考えていること。第2は,「次のメシの種」としての魅力を感じていることである(図2)。

タイトル
図2 なぜ今,健康管理に焦点が?
家庭や個人における健康管理は,社会的背景から大きな注目を集めている。ここに,新分野への展開を模索するエレクトロニクス業界が目を付けている。

 第1の側面について,ある国内大手電機メーカーに在籍する技術者は,健康管理を環境問題と重ね合わせ,次のように指摘する。「健康管理は『エコ』に似ている。今はまだリアリティーがないが,いずれ大きな社会問題になる。環境問題も,少し前までは我々企業にとってもユーザーにとってもリアリティーがなかった。健康管理は,環境問題と同様に,真剣に取り組んでいく必要がある」。

 この技術者が指摘するように,家庭や個人における健康管理が欠かせなくなる状況は世界各地で確実に進行している。特に先進国の多くでは,少子高齢化や生活習慣病の増加などに伴い,医療費の高騰が社会問題化し始めている1)。このため,家庭や個人における健康管理を促し,できるだけ病気になる人を減らすことは,世界の喫緊の課題になりつつある。

 そこで今,電子機器やWebサービスといったITツールを活用して,家庭や個人における健康管理の利便性や効果を高めることに期待が集まっている。ITツールを利用して,日常生活における日々の健康データを連続的かつ手軽に測定・管理し,そのデータに基づいた指導サービスなどを簡単に受けられるようにすれば,より効果的に生活習慣を改善したり病気の兆候をつかんだりできる可能性があるからだ。

 ITツールを活用した健康管理は,「Web 2.0」という表現を模して業界の一部では「ヘルス2.0」とも呼ばれている。こうした言葉が使われ始めていること自体,健康管理が新たな局面に差し掛かっている表れにほかならない。大手健康機器メーカーであるオムロンヘルスケアが,2008年10月に「ネットヘルスケア事業開発部」を立ち上げたのも,それを端的に示しているといえるだろう。