DisplayPortと同じく,現行のLVDSの置き換えを狙う技術には,ザインエレクトロニクスの「V-by-One」と呼ぶ差動伝送方式がある。信号線1対当たりのデータ伝送速度は3.75Gビット/秒。高速性とともに特徴とするのが,「設計自由度の高さ」(同社)である。パソコンとは異なり,テレビの内部伝送路は,「1機種ごとのカスタム設計」(同社)だという。V-by-Oneは,そうしたカスタム設計に対応しやすいため,テレビ・メーカーの評判は高いとする。既に,韓国Samsung Electronics Co.,Ltd.が採用の意向を示しているという。

光配線の消費電力低減が進む

 「光配線はもう,特殊じゃない。ここ1~2年の間に携帯電話機に光配線が搭載されてもおかしくない」(オムロン アドバンスド・コンポーネンツ事業部 光フレキ事業推進PJリーダーの細川速美氏)。

 機器内光配線,中でも携帯電話機のヒンジ部分などに向けた技術開発が,再び活発化してきた。きっかけは光配線の技術的な進展と,携帯電話機をめぐる環境の変化である。

 まず,コストと並ぶ大きな課題として挙げられていた,消費電力の問題が解決しつつある。例えばパナソニック電工はデータ伝送時の消費電力が15mW以下,オムロンは同30mW(SerDes回路を含む)の光配線モジュールをそれぞれ試作した(表A-1)。こうした値は,VGAサイズ以上の映像データを伝送する場合で比較すると「電気配線で伝送する場合よりも小さい」(細川氏)という。

表A-1 携帯機器向け光配線モジュールの試作例
表A-1 携帯機器向け光配線モジュールの試作例

 オムロンが消費電力を低減できたのは,レーザの駆動ICや受光素子のアンプICの消費電力が小さくなったためだ。機能の絞り込みや,微細化による低電圧化などで実現した。

 コネクタも小さくなった。パナソニック電工の試作品は,コネクタ幅が2.6mmと,3mmを下回る。これにより,「一般的なヒンジのケーブル通過部を通せる」(同社)という。

 携帯電話機の高機能化は,依然として続いている。そのため,光配線を求める声も今後,さらに増大するはずだ。液晶パネルの高画素化が進むほど,データ伝送速度が速くなり,電磁雑音の問題がより顕著になる。今では,WVGA対応のパネルを備えた携帯電話機も登場している。光配線ならば伝送路からの電磁雑音は,ほぼ皆無だ。

 高機能化に伴い,携帯電話機内部のシリアル・インタフェース「MIPI」も高速化される予定である。こうした動きも,光配線導入のきっかけになりそうだ。

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