送受信回路を集積化

 大手パソコン・メーカーがDisplayPortを支持する理由は,送受信回路を他のLSIに集積化しやすい点である。信号線のACカップリングを可能にしているためだ。送受信回路において,信号の直流バイアス成分が除去されるため,信号の振幅さえ規定値であれば,送信回路と受信回路の電源電圧が異なっていてもデータをやり取りできる。微細なプロセス技術で製造した1.2Vや1.0Vといった低い電源電圧のLSIにおいても,送信回路や受信回路を集積しやすくなる。例えば,液晶パネルのタイミング・コントローラや映像処理LSIなどである(図8注5)。これにより部品点数の削減を図れるため,「パソコンの小型化やコスト削減,消費電力の低減が可能になる」(Dell社のMontag氏)という。

注5) 既に,タイミング・コントローラ機能を備えたDisplayPortの受信用LSIの開発を,Integrated Device Technology社やNXP Semiconductors社,Parade Technologies社,STMicroelectronics社などが手掛けている。

図8 機器内配線も視野に
図8 機器内配線も視野に
DisplayPortでは,機器間のデータ伝送だけでなく機器内のデータ伝送での利用も想定している。例えば,ノート・パソコンのグラフィックスLSIと液晶パネルのタイミング・コントローラIC間で,映像データを伝送する用途を想定する。現在はLVDSが使われている場合が多いが,DisplayPortを使うことで一般的なLVDSを利用する場合に比べて信号線を大幅に削減できる。加えて,DisplayPortの送信ICをグラフィックスLSIに,あるいはグラフィックスLSIと共にCPUに集積化すれば,パソコンの小型化や軽量化,消費電力の低減が可能になるという。受信ICをタイミング・コントローラICに,あるいは受信ICにタイミング・コントローラ機能を追加することもできる。図はノート・パソコンの構造を概略化したものである。

内部伝送路にも利用

 DisplayPortには,外部インタフェース向けの仕様とは別に,内部でのデータ伝送も視野に入れた仕様が設けられている。例えば,パソコンのグラフィックスLSIと液晶パネルのタイミング・コントローラIC間で,映像データを伝送する用途を想定する。こうした用途には現在,LVDSが広く使われている。ただ,液晶パネルの高解像度化などが進むほど,LVDSの信号線が増えて太くなってしまう。そこで,信号線1対当たりのデータ伝送速度が最大2.7Gビット/秒と高速なDisplayPortを使い,信号線の削減を図るという考えも浮上している。