つまり,携帯機器にMHL対応の送受信ICを実装すれば,新たにコネクタを設ける必要はない。あるビデオ・カメラの開発に携わる技術者は,「USBとコネクタを共有できるのは便利。興味深い」と評価する。

 MHLには,携帯電話機メーカーも関心を寄せているようだ。SiliconImage社は携帯電話機メーカーなどとともに,コンソーシアムを結成したもよう。2009年中ごろまでには正式な発表があるだろう。

三つの機能拡張

 HDMIの機能拡張に関しては,次世代仕様で三つの機能を実現する予定だ。(1)「4K×2K」(4096×2160画素)や3次元(3D)映像への対応,(2)ネットワーク機能の強化,(3)音声機能の拡張,である。

 (1)に向けては,最大データ伝送速度を向上させる予定である。現行仕様では,信号線1対当たりの最大データ伝送速度は3.4Gビット/秒で,ケーブル1本当たりに換算すると最大10.2Gビット/秒である。次世代仕様では,この値を超えるようにする。このほか,3D映像を伝送する際に必要な映像フォーマットなどを策定するという。

 (2)は,HDMIケーブル1本でTCP/IPによるデータ伝送に対応し,Ethernetのデータも伝送可能にする。HDMIの端子にある予備用の1本を用いて実現する予定だ。これにより,HDMI搭載機器でもDLNA対応を図れるようになるという。

 SiliconImage社は,この機能拡張により,同社が開発した家庭内ネットワーク技術「LiquidHD」を利用できるようになると期待する。同技術を用いれば,例えば同一ネットワーク上に接続されているLiquidHD対応のテレビから,ネットワーク上のどのBlu-ray Discプレーヤーの映像も視聴できるという(図6)。EthernetやMoCA(Multimedia over Coax Alliance)仕様の同軸ケーブル,HomePlug準拠の電力線,無線LANなどを使い,家庭内ネットワークを構築できる。同技術は,「TCP/IPに対応しているならどの規格でも利用できる」(同社)と説明する。

 (3)は,HDMIケーブルを使い,テレビ側から5.1チャンネルの音声データを伝送可能にする。従来,このような場合には,S/PDIFケーブルを介してAVレシーバやスピーカーなどに出力していたという。

【図6 寝室のテレビで居間のパソコンの映像を視聴する】 SiliconImage社は,家庭内ネットワーク技術「LiquidHD」を開発した。同一ネットワークにつながったLiquidHD対応の機器であれば,あらゆるクライアント機器(テレビやパソコンなど)からソース機器(Blu\-ray DiscプレーヤーやSTB,パソコンなど)を操作し,ソース機器内のコンテンツを視聴できる。図にはLiquidHD対応機の操作例と,動作に対応する LiquidHDの機能を記載した。なお,LiquidHDへの対応に関しては,ソース機器に専用ソフトウエアを実装し,クライアント機器にLiquidHD対応のLSIを搭載すればよい。
図6 寝室のテレビで居間のパソコンの映像を視聴する
SiliconImage社は,家庭内ネットワーク技術「LiquidHD」を開発した。同一ネットワークにつながったLiquidHD対応の機器であれば,あらゆるクライアント機器(テレビやパソコンなど)からソース機器(Blu-ray DiscプレーヤーやSTB,パソコンなど)を操作し,ソース機器内のコンテンツを視聴できる。図にはLiquidHD対応機の操作例と,動作に対応するLiquidHDの機能を記載した。なお,LiquidHDへの対応に関しては,ソース機器に専用ソフトウエアを実装し,クライアント機器にLiquidHD対応のLSIを搭載すればよい。
[画像のクリックで拡大表示]

―― 次回へ続く ――