価格低減への懸念も

 USB 3.0に対して期待感が広がる一方で,機器メーカーからはUSB 3.0を導入する際の部材コストの上昇や,電磁雑音対策などに対して懸念する声も聞こえてくる。

 コストに関しては,「普及すればいずれ価格が下がるだろうが,初期におけるコスト上昇は避けられない。どの程度になるか不透明だ」と,機器メーカーは口をそろえる。高速化による利便性の向上に対して,ユーザーが製品価格の上昇をどの程度許容するかにかかっている。

 例えばバッファローは,容量が1Tバイトで価格が1万3000円の外付けHDDにおいて,USB 3.0を導入することによる製品価格の上昇分を,「2000~3000円に抑えたい」(同社)とする。さらにパソコン側が対応していない場合には,ホスト側の拡張ボードもセットで販売する必要があるため,「セットで6000~7000円以下」(同社)に抑えたいという。

ケーブルの取り回しに課題

 このほか機器メーカーからは,USB 3.0対応ケーブルを課題視する声が多く上がっている。ケーブルが太くて硬く,かつ価格が高くなる可能性があるからだ。

 ケーブルは後方互換性確保のために,信号線を従来の約2倍に相当する9~10本通すことになった。さらにシールドも必要になるため,ケーブルが硬くなりやすい。「現在の試作ケーブルでは,現行の約2倍の太さになっている。硬いために取り回しも容易ではない」(複数の周辺機器メーカー)。

 例えば外付けの携帯型HDDや光ディスク装置などでは,「筐体自体が小さく軽いため,ケーブルによって動いたり,倒れたりする恐れがある」(バッファロー)。また,携帯型HDDにはケーブルを筐体に巻き付ける品種がある。こうした品種では,「太いケーブルをどのようにして巻き付けるか考え直さないといけない」(同社)という。

 ケーブルも高価になりそうだ。USB 2.0のケーブルは1m品で200~300円程度だが,USB 3.0の場合,「発売直後では,eSATA用ケーブルと同程度の1500円くらいになりそう。将来普及が進んでも,500~600円程度はするだろう」(ある外付けHDDの技術者)という。こうしたケーブルの価格低減も,将来の課題となる。

新たな雑音対策も

 高速化に伴う電磁雑音の増大に対して,懸念する機器メーカーも多い。「USB 2.0においても,放射電磁雑音は大きな問題になっている。ましてやその10倍高速のUSB 3.0で,果たしてどの程度放射電磁雑音があるのか,大変気にしているところだ」(前出のHDDの技術者)。

 少なくとも,現行の対策手法を変えなければならないことは,ほぼ確実だ。例えば,カットオフ周波数を7.5G~12.5GHz程度まで高めたコモンモード・フィルタが求められる。USB 3.0の信号周波数である2.5GHzの3~5倍高調波まで対応するためだ。

 既に,電磁雑音対策部品のメーカーが,対応品の開発を急ピッチで進めている。例えばTDKは,USB 3.0対応のデバイスの評価向けにカットオフ周波数を8GHzまで高めたコモンモード・フィルタを開発済みである。USB 3.0対応機器の実用化時期に合わせ,さらにカットオフ周波数を高めた製品も用意する考えだ。このほか村田製作所も,USB 3.0向けのコモンモード・フィルタを開発中である。

―― 次回へ続く ――