既に動きだしているのがメモリ・カードである。例えばSDメモリーカードでは,最大データ転送速度が現行仕様の12倍に相当する300Mバイト/秒への高速化を図る。JEDECが規格化を進めている「UFS(universal flash storage)」の場合は,最大3Gビット/秒に達する注2)

注2) メモリ・カードが高速化されることで,外部インタフェースを使わずにHD動画のデータを手軽に転送できるようになる。「メモリ・カードのスロットを搭載したテレビや光ディスク装置が増えている。メモリ・カードの容量もGバイト以上ある。それなら,HD動画コンテンツをカードに入れて携帯機器でやり取りした方が新たなコネクタもケーブルも要らないので現実的」(前出のHDMI主導メーカーの幹部)との声も上がっている。

 内部配線に対する高速化要求も予想される。例えば,折り畳み型携帯電話機の液晶パネルとメイン・ボードをつなぐ配線に,さらに高速な手法を採用するという考えだ。光導波路や光ファイバを筐体内配線に利用する「光配線」なども,現実味を帯びてくる。

 機器メーカーの技術者が強い関心を寄せるのが,高速化に伴う雑音対策と熱対策である。高速インタフェースの電磁雑音対策に取り組む技術者は,「対策手法を大きく変えなければならないだろう」と口をそろえる。

 例えば,USB 3.0を利用する場合,カットオフ周波数の高いコモンモード・フィルタが新たに2個必要になるという。こうした周辺市場に期待する声も日増しに大きくなっている状況だ。

進化する無線伝送技術「TransferJet」に期待高まる

 USB 3.0や次世代HDMIといった有線ケーブルでつなぐインタフェースだけでなく,無線伝送技術に期待する声もある。中でも注目されているのが近接無線技術「TransferJet」と,ミリ波伝送技術「WirelessHD」だ。

 TransferJetでは,対応機器同士を3cm以内に近接させてデータを伝送する。実効的なデータ伝送速度は最大375Mビット/秒と,USB 2.0の実効速度である約300Mビット/秒と同程度である。そのため,USB 2.0の代替が可能だ注A-1)。2009年前半には標準仕様が固まる予定で,2010年にも対応製品が登場する見込みである。

注A-1) ただし,TransferJetを開発し,規格化を主導するソニーによれば,USB 2.0を完全に置き換える考えはないという。「外出先で携帯電話機同士,あるいはデジタル・カメラ同士をつなぐなど,ケーブルの接続が面倒な状況でこそTransferJetの利便性が生きる」(ソニー)。消費電力は500mWを下回る見込みという。

 一方,WirelessHDはHDMIのように,1080p,60フレーム/秒の映像を非圧縮伝送できる。CEC機能のような機器間制御技術も導入されている。実用化が進んでおり,パナソニックが同技術を採用したPDPテレビを2009年4月に発売する。現状では送受信システムが大きく,携帯機器への利用は難しい。だが,「ビデオ・カメラなどの携帯機器への搭載も視野に入れている」(パナソニック)という注A-2)

注A-2) 携帯機器に載せるには,送受信回路の寸法を,「少なくとも半分以下にする必要があるだろう」(パナソニック)とする。WirelessHD向けチップセットを手掛けるSiBEAM社も,デジタル・カメラやビデオ・カメラに向けて小型化を進める考えだ。

―― 次回へ続く ――