第4回:新鮮な発想こそが,電子ペーパーの未来を開く
電子ブック端末の市場が急拡大し,電子ペーパーは普及段階に入った。電子ペーパーの潜在需要は,電子ブック端末にとどまらない。しかし,新たな応用の可能性を切り開くためには,これまでにはない斬新な発想が求められる。もしかしたら,技術者が常識的には思いもつかないようなアイデアが突破口になるかもしれない。連載の第4回目は,電子ペーパーの未来を開く発想やアイデアについて,ユニバーサル・デザインの専門家でありIT機器開発やウェブ構築へのコンサルティングを行っている関根千佳氏(ユーディット社長)に,語ってもらった。(Tech-On!)
今年も電子ペーパーアイデアコンテストの募集が始まった(Tech-On!関連記事,募集要項)。毎年,この審査が近づくと,今年はどんなものが出てくるのだろうと,わくわくしてしまう。電子ペーパーについて,これまで全く想像もつかなかったようなアイデアが満載だからだ。

ビジネス機械・情報システム産業協会(JBMIA)の電子ペーパーコンソーシアムに参加したのは3年前。2005年に「スローなユビキタスライフ」(地湧社)という近未来小説を出版したのだが,その中に出てくる「ルイカ」という名前の携帯端末に,電子ペーパーに近い機能があったのだ(図1)。手書きで入力できる機器で,物語の中では,シニアが酒蔵を取材し,日本酒サイトを更新するのに使っていた。その画面は,日本古来の矢立(やたて)のように,くるくると小さく丸めることもできるが,開いた瞬間にすっと硬くなって入出力が可能になる。筐体は天然木や竹でできていて,手触りがいい。アナログとデジタル,日本文化と西洋技術の間に橋をかけるものだった。「いつか,一緒にこれを作りたいね」と,コンソーシアムのメンバーが「参加しないか」と声をかけてくれたのである。
だが,最初はなんだか難しい技術の話が多く,全体会議は少し眠かった。技術屋さんばかりで集まっていて,ちょっと煮詰まっている感じがした。「ルイカを作ろう」と言い出したチームの中で議論が始まった。もっとたくさんの人が参加できる企画はないのかな? 電子ペーパーに託せる夢もきっとあるよね? そんな思いから,アイデアコンテストの企画が実現したのだ。最初は不安だったが,ふたを開けたら,まあ,面白い。「こんなものまで」と吹き出しそうなアイデアが出るわ出るわ,何十件も寄せられる。

電子ペーパーコンテストはワンダーランド
え? スリッパの上に電子ペーパーが載っていて,旅館や病院で行き先を案内してくれるって? そりゃ便利だね。なになに,電子ペーパーで折り紙すると,折り方を教えてくれて,最後に柄もつけられる? 犬だったら,ワン!って吠えてもくれるのか(図2)。これまでにはありえない?可愛いものも寄せられる。ビンの中に,紐で結んだメッセージを入れるの。結んである紐をほどくと,メッセージが読めるのね。この紐が重要だわ。届けたい相手だけにしか開けられない仕組みになっているんだって。なんてロマンチックなんでしょう(図3)。

「家をぜーんぶ電子ペーパーでくるんで,季節によって色を変えよう,景観に合わせよう」というのから,「えーい,町ごと発電可能にしよう」といったエコな意見も出る。いろんなものをくるむことで,これまでアトム(原子)の世界にいたものを,あっさりとビット(電子)の世界の住人にすることもできるのが電子ペーパーかも。「ユビキタス革命って,意外にシンプルじゃないの」と,関係者の間では“ラッピング革命”なる言葉も生み出された。アイデアコンテストのスケールは家や地域にとどまらず,「地球全体を覆ったら?」とか,「巨大な宇宙ステーションの全面に設置」という壮大な発想さえ生まれた。
たぶん,真面目な電子ペーパーの技術者だったら,常識的には思いもつかないアイデアかもしれない。だが,このコンテストの中から生まれたアイデアが,いつか,社会を変えていくのだろう。そうだよね,これ,あったらうれしいよね。そっか,こういう考え方もあったんだ。そんな新鮮な発想こそが,イノベーションの原点だからだ。人のニーズから,ささやかな夢や驚きから,新たな未来が開ける。今年も多くのセンス・オブ・ワンダーを期待したい。
バックナンバー
- 第5回:iPhoneに見る電子ペーパーの近未来 2009/09/01
- 第4回:新鮮な発想こそが,電子ペーパーの未来を開く 2009/08/25
- 第3回:電子ペーパーによって“ラッピング”された世界 2009/08/18
- 第2回:“メディア的”電子ペーパーの未来 2009/08/04
- 第1回:電子ペーパーが創る豊かな未来を想像して 2009/07/29
- 投稿者
- 技術預言者見習い
- 現在電子ペーパーと称して、電子ブックに使用され販売されている物は、表示に電力を使わず、反射表示である、との特長だけでは性能の上がった液晶パネルには到底対抗できません。更に、解像度の低さから欧米のアルファベット文字には対応できますが、漢字文化では文字の中が潰れて見難くなります。 また、I−PAD等に見られるようなタッチパネルの操作は液晶の様なリアルタイムの動作や当然のことながらフルカラーの動画は不可能と考えられます。現在の液晶はバックライトもLED化され2次電池の容量も増え、太陽電池の活用も考えると、数十時間の動作は容易であると考えられます。用途を熟慮しなければ液晶より高価なペーパーライクディスプレーは早晩消えゆく運命に有ると思われます。実現可能で実用的なアイデアが求められます。












