加藤 敏春 氏
加藤 敏春 氏
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米国のIT系企業や電力事業者を中心に,スマートグリッドに関する話題が活発だ。IT技術を駆使してエネルギーの有効利用を図るコンセプトとして登場したが,対象とする範囲が非常に幅広く,漠然としてつかみにくい面もある。このスマートグリッドに関して,「もっと本質を議論すべき」と説くのが,元内閣審議官で経済産業省OBの加藤敏春氏だ。省エネ家電買い替え促進策である「エコポイント」の提唱者としても著名な加藤氏に,スマートグリッドに注目する理由を聞いた。

――加藤さんはかつて「シリコンバレー・モデル」という著書において,インターネットをコアにしたIT技術による変革の可能性を指摘しました。その加藤さんが最近,スマートグリッドに注目している理由はどこにあるのでしょうか?

加藤氏 最近,日本国内でも様々な場面で「スマートグリッド」という言葉が用いられるようになりました。新聞紙上にも,ほとんど毎日のように,関連する話題が載っています。しかし私は,「スマートグリッド革命」の本質が,しっかりと議論されていないと感じています。単に「クリーンテック分野のベンチャー企業や,スマートメーターが登場する」といった短期的な話が多く,スマートグリッドの引き起こすイノベーションについて,十分な理解が進んでいないのではないでしょうか。

 私は1990年代の中頃から,米シリコンバレーに駐在しておりました。当時はITベンチャーの勃興期で,様々な企業が誕生しつつあった。中でも当時,インターネットが登場し,瞬く間に社会やビジネスの在りようを大きく変革していく様を目撃しました。インターネットによるイノベーションを,現場で感じることができたんです。そのインパクトというか,社会を変革する力というのはすさまじいものがあった。私は「これぞ,イノベーションである」と直感し,その大きなインパクトについて,日本国内のイベントで講演したり,シリコンバレーにSVMF(Silicon Valley Multimedia Forum)という団体を立ち上げたりするなど,啓蒙活動を進めてきました。それらの一連の取り組みの成果を,「シリコンバレー・モデル」という本にまとめています。

インターネットを凌駕する規模に

 そうした経験から言わせてもらうと,今回の「スマートグリッド」には,当時インターネットが登場してきた時と同じようなうねりを感じます。それどころか,スマートグリッドが起こす変革の大きさは,インターネットをはるかに凌駕する規模になるかもしれません。本当に大きな革命が,再び始まったと感じています。