第1回:電子ペーパーが創る豊かな未来を想像して
電子ペーパーが普及段階に入った。Amazon.comの参入で電子ブック端末の市場が急拡大したことが,起爆剤となった。電子ペーパーの可能性は,電子ブック用途だけに限らない。電子ペーパーを応用することで,“紙とペン”とは違った形で,全く新しいコミュニケーションが生まれる可能性がある。本連載では,こうした電子ペーパーの新たな応用の可能性と,それを形にしていくための課題を議論する。第1回目は,電子ペーパー関連企業が多数参加する「電子ペーパーコンソーシアム」の坪田知己委員長に,電子ペーパーの未来に対する提言と,さらなる普及拡大に向けた取り組みについて紹介してもらう。(Tech-On!)
「未来の紙」として,長い間,普及が待たれていた電子ペーパーが,いよいよ普及期に入った。現在はモノクロだが,カラーの製品も数年のうちに登場すると見られており,市場は急拡大の見込みである。2003年から日本の事務機器メーカーを中心に活動が始まった「電子ペーパーコンソーシアム」では,電子ペーパーが作る新たな世界に向けて,研究活動を展開中だ。

電子ペーパー引き金を引いたのは,米国の書籍のインターネット販売最大手の米Amazon.com, Inc.が,2007年秋に「Kindle」という電子ブックを発表し,これが好調に売れ行きを伸ばしていることだ。電子ブックは,2004年にソニーの「リブリエ」,松下電器産業(現パナソニック)の「ΣBook」が登場したが,売れ行きは伸びなかった。ところが,2006年にソニーが米国で「Sony Reader」を発売し,好調な売れ行きを示したことから,Amazon社が追撃に出た。
省電力で環境に優しく,何度でも書き換えができることが,電子ペーパーの魅力だ。このことは,今後に大きな可能性を感じさせる。
SFショートショートの巨匠,星新一は,1960年代に「テレビシート加工」という奇抜なストーリーを書いている。テレビがシートのように薄くなって,天井や壁がそのシートで覆われるという未来図を描いたものだ。ところが,世界中のテレビがシート状になって,天井や壁面を覆うようになれば,電気の消費量が膨大なものになって,とても実現はしないだろう。
しかし,電子ペーパーなら可能だ。表示自体に電力を消費しないからだ。
やがて電子ペーパーの製造コストが大きく低減し,カラー化し,耐久性が向上し,大面積のものも作られるようになれば,ビルの外壁も,道路の表面も,あらゆるものが電子ペーパーで覆われる可能性がある。私はこれを「全世界ラッピング革命」と名づけた(詳細は,第2回以降で紹介する予定)。
現在,電子ペーパーコンソーシアムは,韓国のSamsung Electronics Co., Ltd.やLG Display Co., Ltd.,仏France Telecom社なども加わって,国内外の関係情報の収集,国際的な規格化などをしている。さらに,こうした来るべき未来を構想しながら,応用分野の拡大,社会的な影響などを事前調査する活動にも取り組んでいる。
あらゆるものが電子ペーパーに覆われたら,その管理権,見る側への配慮などをどうするか――。様々な問題が議論の中で浮かび上がってきた。

コンソーシアムでは,一般の人たちからの応用のアイデアを求める「アイデアコンテスト」を2007年から実施してきた。今年も,アイデアコンテストや論文コンテストを行う(募集要項)。技術側の独り相撲ではなくて,多くの人が,知恵を出し合って,豊かな未来を創っていきたいという願いからだ(Tech-On!関連記事)。そうした活動を通じて,電子ペーパーの普及を先導していきたい。
バックナンバー
- 第5回:iPhoneに見る電子ペーパーの近未来 2009/09/01
- 第4回:新鮮な発想こそが,電子ペーパーの未来を開く 2009/08/25
- 第3回:電子ペーパーによって“ラッピング”された世界 2009/08/18
- 第2回:“メディア的”電子ペーパーの未来 2009/08/04
- 第1回:電子ペーパーが創る豊かな未来を想像して 2009/07/29












