COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

第2回:簡素を極めたメイン・ボード

山田 剛良=日経エレクトロニクス
2009/07/09 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2006年12月4日号 、pp.39-41 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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簡素を極めたメイン・ボード

 Wiiの設計思想はメイン・ボードに如実に表れている。基板の表で目立つのは,BroadwayとHollywoodのほか,DRAM,無線LANモジュール,Bluetoothモジュールといった程度。基板の裏側に至っては,フラッシュ・メモリとオーディオ/ビデオ用のカスタムLSI,電源制御用ICくらいしかない。部品点数は700前後とみられる。

 シンプルに見える理由の一つは部品点数,特に,抵抗やコンデンサ,フェライト・ビーズといった受動部品の数が少ないことにある。Wiiのような高速動作のマイクロプロセサを使う製品では,LSIの周辺や裏側にチップ抵抗やコンデンサ,フェライト・ビーズを多数配置することが多い。信号の波形を整えたり,信号雑音を抑えたりするためだ。ところが,Wiiでは抵抗の数が少なくコンデンサの数も控えめ。対症療法的に雑音対策部品を追加したような個所も見当たらない。プリント基板の受託開発に携わる技術者は,「カスタムLSIの端子配置まで含めて最適化したのだろう」と推測する。

 部品メーカーの技術者は,「予備のパターンや冗長な部品が極端に少ない」と指摘する。後で必要になったときのために,予備のパターンを用意しておき,必要がなかったら0Ωのチップ抵抗を載せたり,「保険」の意味で多めの部品を載せたりするといった常套手段の形跡が,Wiiでは皆無だという。

 その他の部分でもコスト低減は徹底している。携帯機器メーカーの技術者はLSI周辺の貫通ビアの多用に驚く。一般に多端子のLSIを使う多層基板では,配線の自由度が阻害されるのを嫌い,基板コストが高くなる非貫通ビアを多用しがちだが,Wiiにはあまり見当たらない。「入念に設計を練らないと,このような基板にならない」。

 Wiiのメイン・ボードではカスタムLSI,コネクタ類を除くと,部品のほとんどに汎用品が使われている。部品メーカーのエンジニアは「USBコネクタやSDメモリーカードのスロット,受動部品などは汎用品。無線LANなどのモジュールも汎用品ベース。これなら価格も安いし,必要に応じて供給元を代えられる」と舌を巻く。

電磁雑音対策は入念

 ただし,Wiiの設計方針は決して低コスト一辺倒ではない。耐久性向上を狙って基板の表面を金メッキ仕上げするなど,ここぞという部分には思い切ってコストを掛けるメリハリがある。前述の部品メーカーの技術者は,「特に電磁雑音の影響を廃する対策が贅沢」と指摘する。

 例えば,「ゲームキューブ」用メモリ・カードのスロット近くやシステムLSIの直下に3端子コンデンサを使ったり,USBコネクタからの信号配線に,輻射雑音の原因になるコモンモード雑音を除去するコモンモード・チョークコイルを配置したりする。また,外部と接続するコネクタ周りには,静電気放電の影響を防ぐためにツェナー・ダイオードを必ず配置している。

 基板の表裏の1層目(表面)がほとんど接地パターンで覆われていたり,表裏の接地パターンが多数の貫通ビアで結ばれたりしているのも電磁雑音の影響を封じ込める策である。それぞれは基本的な手法だが,携帯機器メーカーの技術者は「必要な対策を漏らさず施しているのがすごい」と語る。

図3 電磁雑音の影響を軽減するため,入念な対策が施されている
図3 電磁雑音の影響を軽減するため,入念な対策が施されている
プリント基板の外周だけでなく,内側にビス穴を設けシールド板を基板の接地面と接触させている(a)。導通を確実にするためにシールド板には凸状の加工をしている。ヒートシンクを固定するビス穴の周りにフェライト・コアを配置(b)。無線LANモジュール自体をほぼ舞え全面的にシールド板で覆った(c)。さらに導電性の素材を使ってモジュールのシールド板と基板の接地,シールド板との間を導通させている。シールド板と基板はしっかりとビス止めする(d)。このためだけに用いるビスが11本もある。

 電磁雑音対策へのこだわりはメイン・ボードだけに終わらない(図3)。基板を覆うシールド板は,基板の接地電極との接点を増やすために,中央部分を何カ所か凸形に加工している。部品メーカーの技術者は「こうした加工は,基板上の部品と万が一干渉すると不具合の原因になる側面もある」と指摘する。長所と短所を勘案して,電磁雑音対策を優先したと思われる。

 この技術者を「ここまでやるのか」と驚かせたのが,ヒートシンク裏に取り付けられたフェライト・コアだ。ヒートシンク自体は基板に接地され,基板下のシールド板と共締めする構造になっている。この取り付けビスの周りをフェライト・コアで囲む形になる。「シールド板の外に飛び出したヒートシンクのフィンが電磁雑音に及ぼす影響を気にしたのだろう」と推測する。

 このほか,電磁雑音の原因になりやすい無線LANはアンテナをメイン・ボードのシールドの外に出し,モジュール自体をシールド板で完全に覆う。さらにモジュールを覆うシールド板の上下に導電性樹脂を取り付けて,基板の接地電極,シールド板のそれぞれと導通させるという徹底ぶりだ。

―― 次回へ続く ――

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