COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

第1回:シンプルに徹したWiiの設計

山田 剛良=日経エレクトロニクス
2009/07/08 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2006年12月4日号 、pp.38-39 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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 「思ったよりずっと小さい。部品も少ないな」「無理をしている部分が見当たらない」「部品の使い方がツボを押さえている」――。任天堂が発売したゲーム機「Wii」のメイン・ボードを見た技術者は,口々にこうした感想を漏らした。

 Wiiの外形寸法は「DVDケース三つ分」ほどの44mm×157mm×215.4mm。電源はACアダプタで供給するので,筐体に収まるのはメイン・ボードとスロット・ローディング方式の光ディスク装置だけ。メイン・ボードの寸法は132×195mmとA5判よりも少し小さい。ここにWiiの中核機能がまとまる。

 設計の面から見たWiiの特徴を一言で表すと「完成度の高さ」となる。徹底的に低コストを狙いながら,必要な部分には惜しみなくコストを掛ける。そのバランスを慎重に検討した跡がうかがえる。

シールド板で基板をサンドイッチ

図1 シールド板でサンドイッチ
図1 シールド板でサンドイッチ
Wiiの内部は電磁雑音の遮蔽に重点をおいて作られている。メイン・ボードはシールド板で挟み込むような形になっている。

 Wiiの筐体にはY字形の溝を持つ特殊なビスが4カ所に使われており,開くには専用の工具が必要になる(図1の左下の写真)。これ以外に通常のプラス・ドライバで外せるビスも併用されている。すべてのビスを抜き取るとカバーが取り外せる。現れるのは光ディスク装置を覆うシールド板。光ディスク装置の下には別のシールド板があり,メイン・ボードはさらにその下に組み込んである。メイン・ボードの裏にはもう1枚のシールド板がある。

 このようにWiiは,光ディスク装置とメイン・ボードを3枚のシールド板で挟み込んだサンドイッチ構造になっている(図1)。電磁雑音の遮蔽に重点を置いた設計であるのは一目で見て取れる。

 特に,メイン・ボードを挟むシールド板は,上下から基板をぴったり覆う形状になっており,ほとんど穴がない。基板とシールド板は多数のビスでがっちり固定されている。メイン・ボードから外への配線は光ディスク装置につながる電源ケーブルおよび信号線フラット・ケーブルと,前面パネルに組み込んだLEDにつながるケーブルのたった3本。ある部品メーカーの技術者は,「デジタル家電で電磁雑音の対策をここまでやるものは多くない。ノート・パソコン並みの厳重さ」とコメントする。

強制冷却は主要チップだけ

 巨大な冷却ファンやヒートシンクを備える「プレイステーション 3(PS3)」に比べると,Wiiの冷却機構はかなり簡素である(図2)。約3.5cm角のファンを本体の背面側に装備し,前面にある光ディスクを挿入するスロットと,底面の開口部から空気を吸い込み,ヒートシンクを経由して背面の開口部から排出する構成になる。

図2 冷却機構は極めてシンプル
小型の放熱板をマイクロプロセサ,描画回路と周辺回路,DRAMを統合したシステムLSIだけに取り付け,約3.5cm角の小型ファン1基で冷却する(a)。PS3と比較すると,ヒートシンク,ファン共にケタ違いに小さく簡素だ(b)。
[画像のクリックで拡大表示]

 このヒートシンクは米IBM Corp.製のマイクロプロセサ「Broadway」と,カナダATI Technologies Inc.が設計し,NECエレクトロニクスが製造する描画回路,DRAM,周辺回路を統合したMCM「Hollywood」を冷却するように取り付けられている。

 簡素な冷却機構で済む理由は,BroadwayとHollywoodの消費電力が小さいからだ。例えば,90nmルールで製造されるBroadwayの動作周波数の推定値は729MHz,チップ面積は18.9mm2である。PS3が採用したマイクロプロセサ「Cell」も90nmルールで製造されるが,動作周波数3.2GHz,チップ面積228mm2と,Broadwayと比べるといずれも1ケタ大きい。製造プロセスが同じであれば,動作周波数が高くチップ面積が大きいほど消費電力が大きくなる。

―― 次回へ続く ――

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