QVGAなら余すことなく表現
電子書籍の成功例として「辞書」が脚光を浴びる一方で,実は「地図」も着実に市場を広げている。現在はカーナビやパソコン向けなどが主体だが,ここにきて携帯電話機が加わり始めた。
キッカケは,画素構成がQVGA(320×240画素)の液晶パネルの搭載開始だ。これまでにもインクリメントPやゼンリンデータコムなどが,QVGA に満たない液晶パネルを搭載する機種に向けて地図配信サービスを提供してきた。しかし「QVGA化によって,ようやく真の地図を表示できる環境が整った」(ゼンリンデータコム 企画部 プロデューサーの奥正喜氏,図A-1)。
地図は,細かい文字や線を組み合わせて情報を表現する。液晶パネルの画素数が少ない場合,1文字当たりの寸法が大きくなるので紙と同等の情報量を盛り込むことが難しくなってしまう。このため例えばゼンリンデータコムが手掛ける地図配信サービスでは,配信先の携帯電話機の機種名から液晶パネルの画素構成を把握し,最も見やすい表示になるよう地名や建物名などの一部の文字情報をその都度省略して配信している。しかしQVGAなら,ほぼすべての情報を省略することなく表示できるようになるという。
ゼンリンデータコムはQVGAの液晶パネルの普及をにらみ,新たなサービスの実現可能性を検討している。ゼンリンが刊行する地図「住宅地図」を,携帯電話機に表示する試みだ。住宅地図は,地図上に一軒一軒の建物の名称や居住者名,番地などの文字情報を加えたもので,各戸に訪問する販売員や宅配便会社などに絶大な人気を誇る。この地図データをQVGAの液晶パネルを備える携帯電話機に表示したところ「記載してある文字情報が十分読み取れるレベルであることを確認できた」(同社の奥氏)とする。なお実際にサービスを実施するかどうかについては一切,未定という。