コレステリック液晶型は,光を透過するか反射するかの2つの状態で双安定な,特殊な液晶分子の性質を利用したもの注8~9)。富士通は,それぞれ異なる波長の光を選択的に反射する3枚のコレステリック液晶層を重ね合わせることで,4096色のカラー品を試作した。「2005年度中には26万色表示品も開発する」(同社の橋本氏)という注10)。旭硝子は「コレステリック液晶に特有の焼き付きを生じさせない技術を盛り込んでいる」(同社 中央研究所 主幹の新山聡氏)とアピールする。

注8) コレステリック液晶の基本技術は米Kent State Universityが保有している。富士通は,この特許技術を利用している。これに対し,旭硝子や富士ゼロックスはそれぞれ独自の技術という。

注9) 粒子移動型とコレステリック液晶型では,視野角特性に違いがあると指摘する声が多い。視野角の依存性が少ない粒子移動型に対し,コレステリック液晶型は「視野角によって見栄えが変わる点が課題だろう」(複数の電子ペーパー・メーカー)という。

注10) 富士通は当初,実用化を2006年度中としていたが「2007年度になりそうだ」(同社)という。まずは,大型や高精細は狙わず,4インチ型前後の小型の用途を目指す。

目指すはあくまで「紙」

 さまざまな電子ペーパー技術が互いの特徴を競い合う中,低コスト化や紙の代替といった方向性を明確に打ち出すのが,SiPix Imaging社と提携したトッパン・フォームズや,富士ゼロックスである。

 トッパン・フォームズは2005年10月,電子ペーパー技術を開発するSiPix Imaging社との戦略的提携を発表し,電子ペーパー市場に参入することを明らかにした。SiPix Imaging社が開発する電子ペーパーを用いて,トッパン・フォームズがモジュール化し,このモジュールを国内では同社が,海外ではSiPix Imaging社が販売するというものだ。トッパン・フォームズが最終製品を開発する場合もある。2006年度中に実用化する予定である。

 トッパン・フォームズが,提携相手としてSiPix Imaging社を選んだ理由は「数ある方式の中で最も安価に実用化できる」(トッパン・フォームズ 情報メディア統括本部 特別プロジェクトグループ マネージャーの渋谷和道氏)と判断したためである。その理由は,ロール・ツー・ロールで生産できる方式であることだ。

 SiPix Imaging社が開発する電子ペーパーは,樹脂基板上に作られた小部屋(マイクロカップ)に,白色粒子と着色した液体を充填する構造を採る。粒子を上下させることで,粒子の色と液体の色を切り替えて表示する。このマイクロカップの作製や粒子/液体の封入などをロール・ツー・ロールによる一連の工程で行える(図3)。同社からトッパン・フォームズには,ロールの状態で電子ペーパーが供給される。

図3 ロールで供給
図3 ロールで供給
米SiPix Imaging,Inc.が開発する電子ペーパーは,ロール・ツー・ロールで製造する(a)。そのため,ロール状態で供給される(b)。フィルムを調達したメーカーは,駆動回路などを組み合わせてモジュール化する。(図:米SiPix Imaging社の資料を基に本誌が作成)