電子書籍端末を実現した陰の立役者が,米E Ink社の電子ペーパーである。ソニーが2004年に発売した端末「LIBRIé(リブリエ)」に採用して,電子書籍用ディスプレイの本命に躍り出た。以下は,現在の市場拡大の直前,2008年6月に日経エレクトロニクスが掲載したE Ink社副社長のインタビューを再録したものである。同氏が語った将来の見取り図は,必ずしも当時の予測通りのスケジュールではないものの,そのままの方向性で着々と実現に向かっている。(2009/6/26)

 電子ブックや携帯電話機,時計…。電子ペーパーを用いた機器が,次々と開発されている。これら機器の多くに電子ペーパーを提供しているのが,ベンチャー企業のE Ink社だ。同社で市場開発の指揮を執る桑田氏が,電子ペーパーと同社の今後,そして同社が現在の地位を築くキッカケとなったソニーとのプロジェクトを語る。

米E Ink Corp. 桑田 良輔氏
(写真:栗原 克己)

――電子ブックに続く電子ペーパーの新たな用途として,現在E Ink社が注力している分野は何でしょうか。

 特にフォーカスしている分野といえば,新聞でしょう。つまり,電子ペーパーを利用した電子新聞です。ここ1年ほど,各新聞社の動きがかなり激しくなってきています。実際,我々はほとんどの日本の大手新聞社と既にコンタクトを取らせてもらっている状況です。この電子新聞という用途は,これからしばらくの間,我々としてもサポートを強化するなどして注力していくことになるでしょう。

 もちろん,動いているのは日本の新聞社だけではありません。もともと,電子新聞に向けた取り組みは,ご存じのように米国の新聞社の方が早かったですから。例えば,米Hearst Corp.などが具体的な検討を進めています。あまり知られていませんが,Hearst社は我々にかなりの出資をしています。Hearst社としても,電子新聞事業にフォーカスしているのだと思います。米国のこうした動きが,最近になって日本や欧州の新聞社にも飛び火したといったほうが正しいでしょう。例えば欧州では,フランスLe Monde社などが少し動き始めたところです。