インテリジェントカー部門賞は、日産自動車が開発した、低燃費運転を支援するアクセルペダル「ECO(エコ)ペダル」。ドライバーが必要以上にアクセルペダルを踏み込んだときに、ペダル内部に組み込んだモータで足の裏に反力を加える。ドライバーは反力を基に、燃費の良い運転ができる。
燃費の状況を表示装置などでドライバーに知らせるだけでなく、アクセルペダルの反力を使って運転を支援するシステムは世界初。2009年度に全面改良する上級セダン「フーガ」から採用を始める。
燃費の状況は、メータ内に配置したECOランプの色と点滅によってもドライバーに知らせる。足からの感覚と表示の両方によって燃費の良い運転ができるよう支援する。ドライバーはペダルを踏む力が重くならないよう、あるいはECOランプが緑色から黄色に切り替わらないように運転すると、燃費の良い運転ができる。多くの運転シーンで5.10%程度の燃費向上(社内測定値)が見込める。
ECOペダルのハードウエア構造は、同社が2007年末に実用化した「インテリジェントペダル」と同じ。組み込むソフトウエアの種類を変えることで、ECOペダルとして機能させる。インテリジェントペダルは、レーダで先行車との車間距離が接近していると判断したときにアクセルペダルを押し戻すことでドライバーに注意を促し、安全性を高める。ECOペダルやインテリジェントペダルのハードウエアは、ドイツContinental社製で、日産自動車では「アクティブペダル」と呼んでいる。
アクティブペダルの採用で最も配慮したのは、モータ故障時の安全性の確保だ。ドライバーがアクセルペダルを踏み込んだときに、モータの故障が原因でペダルが戻らないような事態になれば問題だ。このため、たとえモータが故障しても、ペダルは元の位置に戻る構造とした。
通常のペダルは、ドライバーがペダルを踏み込むと、センサシャフト(回転軸)が回転する。センサシャフトには2本のばねがつながっており、ドライバーがペダルを踏み込むとばねが伸び、ペダルから足を離すとばねの力でペダルは元の位置に戻る。
アクティブペダルも2本のばねを使っているのは、通常のペダルと同じ。構造の主な違いは、モータとプーリが追加されている点。プーリは、センサシャフトと同軸上に半かん合で組み付けられている。2本のばねのうち1本は、モータを介してプーリにつながっている。ドライバーがアクセルペダルを離したときに、不意にモータの回転が停止するとプーリの回転は止まってしまう。しかし、センサシャフトはばねが縮む方向に回転するため、ペダルは元の位置に戻り安全に作動することになる。(小川 計介=日経Automotive Technology)
次ページに開発者の談話を掲載しています。