COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

第3回:現行の薄型化手法を徹底し,電源基板は従来比約1/3に

小谷 卓也,佐伯 真也=日経エレクトロニクス
2009/06/17 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2008年1月28日号 、pp.109-112 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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日立製作所の超薄型液晶テレビ「Wooo UTシリーズ」を分解し,その詳細を解説した2008年1月の日経エレクトロニクスの記事を再掲載するシリーズの第3回目。Wooo UTシリーズは,薄型テレビのトレンドの一つになった「超薄型化」の先鞭を付けた液晶テレビである。今回から,分解結果の本格的な解説に入る。まずは,液晶テレビの超薄型化のポイントの一つである,電源基板の薄型化の秘密を探る。(Tech-On!)


 まずは電源基板である。日立製作所は電源基板を新規開発することで,同社の従来品と比較して厚さ約1/3にしたと説明している。実際に表示部の裏側筐体やクリーム色のカバーを取り外して電源基板を見てみる(図3)。

図3 電源基板は二つに分離
図3 電源基板は二つに分離
電源基板を横から見たところ。液晶パネル・モジュール上にトランス,ヒートシンク,電解コンデンサなどを実装した電源基板を配置する。電源基板は実装されている部品類の高さがほぼそろっている。薄型化が難しい雑音除去用のフィルタのみ別基板で構成しており,液晶パネル・モジュール上に配置していない。

 新規開発といっても,薄型化を実現するために革新的な部品を採用したわけではない。コストは多少高くなってでも,部品の数量や配置など,現行の技術で考えられる薄型化の手法を徹底的に取り入れることで電源基板を薄くしたようだ。「やられたという感じだ」─。電源基板の開発に従事する技術者はため息交じりにつぶやく。テレビ・メーカーの技術者も同様に,「部品点数や作業工程の増加によるコストアップは承知の上で,薄型化に注力したのだろう」と推測する。

 液晶パネル・モジュール上に配置する電源基板には,トランス,ヒートシンク,電解コンデンサ,高周波リレーなどの部品を配置する注1)。横から見ると,これら部品類の高さがそろっているのが確認できる。強いて言えば,トランス,ヒートシンクなどの部品が最も背が高い部品のようだ。高さを測定すると,いずれも基板表面からの高さが約9mmである。

注1)日立製作所はWooo UTシリーズの放熱機構として,表示部背面の上部と下部に排気口と吸気口を設けた。排気口と吸気口の間には,幅が約10mmの熱の通り道があるという。ただし,今回の分解ではこの通り道をはっきりと確認することはできなかった。電源基板には部品類が数多く実装されており,筐体との間に明確な熱の通り道は存在しない(連載の第1回の「放熱機構」を参照)。

 ここで,技術者があることに気付く。雑音除去用のフィルタとみられる部分のみ別基板で構成しており,液晶パネル・モジュールの外側部分に配置している。フィルタを搭載する基板の厚さは約22.5mm。メインの電源基板に対して約2倍の厚さだ。「雑音除去用のフィルタを9mm以下に薄型化するのは難しい。別基板で構成するのは仕方ない」(ある部品メーカーの技術者)。

薄型化により部品点数は増加

 電源基板に用いた薄型化の取り組みを詳細に確認するため,Wooo UTシリーズのメインの電源基板と,UTシリーズ発売まで業界最薄だった「AQUOS Gシリーズ(LC-32GH3)」に搭載する電源基板を比較してみる。電源基板の厚さはWooo UTシリーズは約12.3mmで,AQUOS Gシリーズの約26mmと比べて約1/2だった(図4)。

図4 電源基板は現行品の約1/3に
日立製作所の「Wooo UTシリーズ(UT32-HV700B)」と,UTシリーズ発売まで業界最薄だったシャープの液晶テレビ「AQUOS Gシリーズ(LC-32GH3)」の電源基板を比較した(a,b)。電源基板の厚さはWooo UTシリーズが約12.3mmと,AQUOS Gシリーズの約26mmと比べて約1/2である(c)。一方,電源基板の面積はWooo UTシリーズの方が大きい。(a)厚さの比較(b)Wooo UTシリーズの電源基板(c)AQUOS Gシリーズの電源基板
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 これら二つの電源基板を実際に並べて一目瞭然なことが,基板に実装されている部品点数である。Wooo UTシリーズの電源基板に実装されているトランスや電解コンデンサは,AQUOS Gシリーズと比べて,小型品を採用する代わりに数量が多い。これらの部品は,それぞれ複数個を並列使いすることにより,薄型化を実現しているようだ。

 一方,電源基板の実装面積はWooo UTシリーズが約290mm×約160mm。これに対してAQUOS Gシリーズは約246mm×約162mmであり,雑音除去用フィルタの基板を別体にしているにもかかわらずWooo UTシリーズの方が大きい。部品類を並列使いした結果として実装面積が大きくなったようだ。Wooo UTシリーズの表示部の消費電力は117W。チューナー一体型であるAQUOS Gシリーズの消費電力152Wと比べてかなり低い。「117Wという消費電力だから,この面積で収まったのだろう」(部品メーカーの技術者)。チューナー回路を内蔵すると消費電力は高くなり,基板面積は大きくなる。前述の技術者は,「チューナーを内蔵するならば,液晶パネル背面に実装することは難しかったのではないか」と指摘する。

一般的な薄型対策もフルに導入

 電源基板の薄型化に対する取り組みは,部品類の小型化による並列使いだけではない。携帯機器で見られるような一般的な薄型化の手法を数多く取り入れている。その一つがコネクタ類の配置である。

 Wooo UTシリーズに実装されているコネクタ類はすべて,横から差し込むタイプを採用する。「携帯電話機など,薄型化が求められる基板でよく施される手法だ」(部品メーカーの技術者)。一方,AQUOS Gシリーズのコネクタ類は,ほとんどが接続部に対して上側から差し込むタイプだ。シャープがこのタイプのコネクタを採用するのは,液晶テレビの組立工程での作業性を高めるためと考えられる。日立製作所は作業性を向上させてコストダウンを図るより,薄型化を優先させた可能性が高い。

 プリント基板上に配置する部品の実装方法にも,徹底した薄型化のこだわりが存在する。電解コンデンサやヒューズといった背の高い部品は配線を折り曲げることによって,横配置にしている。横配置が難しい高周波リレーは一度,別のプリント基板に実装した後,横置きにし実装するという手法を施している。「ヒューズや高周波リレーの実装方法は強引だ。信頼性面で多少の不安は残る」(部品メーカーの技術者)。

基板裏側も薄型化の工夫が

 電源基板の表側に続き,電源基板の裏側部分も確認してみる(図5)。プリント基板の裏側に部品は実装されていないが,薄型化の取り組みが随所に見られる。

図5 電源基板の裏側にも薄型化の取り組みが
図5 電源基板の裏側にも薄型化の取り組みが
Wooo UTシリーズの電源基板の裏側(a)。高さをそろえて電源基板を水平に配置するために数多くのスペーサを取り付ける。基板を切り抜いて電解コンデンサを沈み込むように実装することで,薄型化を図った(b)。はんだ付け後に部品の不要な配線を切り取ることでスペーサの高さにそろえている(c)。(a)電源基板の裏側部分(b)基板を切り抜いて薄型化を図る(c)基板裏側の高さも均一に

 すぐに分かるのが,高さをそろえて電源基板を水平に配置するために数多くの樹脂製のスペーサを取り付けていることだ。今回は基板自体が厚さ約1mmしかない。「ここまで薄型化すると,基板の歪みやたわみによって基板が下のフレームに接触し,配線が短絡する危険性がある。平坦化することは必須だったのだろう」(部品メーカーの技術者)。

 スペーサには,円状と帯状の2種類がある。円状のスペーサは基板に均等に配置しているのに対して,帯状のスペーサは,電源基板の下側部分に多数取り付けている。「強度面に不安があったのだろう。帯状のスペーサは,補強のために後で取り付けられた可能性が高い」(テレビ・メーカーの技術者)。

 スペーサの高さは共に約2mm。この高さに合わせて,電源基板の裏側に主に二つの薄型化対策が施されている。一つが,電解コンデンサの実装方法である。プリント基板を切り抜いて電解コンデンサを沈み込むように実装することで,薄型化を図っている。もう一つが,はんだ付け後に部品の不要な配線を切り取ることでスペーサの高さにそろえていることだ。配線を切り取る作業により多少のコストアップはやむを得ないが,細部にわたる薄型化のこだわりが垣間見える。

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