COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

第1回:最薄35mmに秘めた技術を見る

小谷 卓也,佐伯 真也=日経エレクトロニクス
2009/06/15 00:00
出典:日経エレクトロニクス、2008年1月28日号 、pp.106-107 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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薄型テレビのトレンドの一つになった,“壁張り”を見据えた「超薄型化」。その先鞭を付けたのが,日立製作所が2007年12月に発売した液晶テレビ「Wooo UTシリーズ」だ。表示部の厚さは35mm(最薄部)。それまで最も薄かったシャープの「AQUOS Gシリーズ」の81mmに比べて,半分以下に薄くした。液晶テレビの超薄型化競争の起爆剤となったこの製品を分解すると,技術者の薄型化へのこだわりが見えてくる。

Wooo UTシリーズの分解については,日経エレクトロニクス分解班が2007年12月にTech-On!で速報している(Tech-On!関連記事)が,本連載ではさらに詳しい内容を掲載した日経エレクトロニクス1月28日号の記事を再掲載する。(Tech-On!)


 表示部の厚さが35mm(最薄部)である日立製作所の液晶テレビ「Wooo UTシリーズ」。薄型化のために,チューナー部をテレビ本体から分離するデザインを採用する。表示部の薄型化のカギとなる部分は,電源基板とバックライトの二つ。32型品を実際に分解すると,細部にわたって薄型化へのこだわりが垣間見える。

[画像のクリックで拡大表示]

バックライト用インバータ回路基板

 Wooo UTシリーズは,バックライトの光源に蛍光管の一種であるEEFL(外部電極蛍光管)を採用する。一般的な液晶テレビには,CCFL(冷陰極蛍光管)が用いられることが多いため,インバータ回路基板も異なった仕様になっている(連載の第5回を参照)。

バックライト

 バックライトを含めた液晶パネル・モジュールの厚さは約20mm。同社の従来品に比べて,厚さは約1/2になった。バックライトの薄型化により実現した(連載の第5回を参照)。

信号処理用基板

 信号処理用のLSIなどを実装するプリント基板にも,薄型化の取り組みが見られる。プリント基板の上下に配置するコネクタはすべて横側から差し込むタイプを採用する。加えて,搭載する電解コンデンサは配線を折り曲げることで,すべて横配置となっている。 表示部とチューナー部はHDMIケーブルで接続するため,プリント基板上にHDMI受信用LSIを備える。プリント基板に実装している部品の多くは,「一般的な部品を採用している」(あるテレビ・メーカーの技術者)。部品のメーカーと用途は日経エレクトロニクスの推定。

タイミング・コントローラ回路基板

 タイミング・コントローラLSIは,他の信号処理用の基板とは別基板で構成する。2本のフレキシブル基板(FPC)を用いて,液晶パネル・モジュールに電源や映像信号を伝送する。表示部の上部に配置するのはこのプリント基板のみだ。あるテレビ・メーカーの技術者は,「強度対策のために,表示部の上側に配置する基板を極力少なくしたのではないか」と推測する。

電源基板

 最薄35mmという表示部の厚さを実現するためのカギとなるのが電源基板だ。日立製作所は電源基板を新規開発することで,従来品と比べて約1/3に薄型化した(連載の第3回,第4回を参照)。電源基板のみ金属製のシールドではなく,クリーム色の紙状の物体で覆われている(連載の第4回を参照)。

放熱機構

 表示部は,冷却ファンなどを搭載しない独自の放熱技術を盛り込んでいる。表示部の背面の上部と下部にそれぞれ排気口と吸気口を設けている。日立製作所によると,排気口と吸気口の間には幅が約10mmの熱の通り道を設けているという。ただし実際に分解すると,プリント基板と裏側の筐体の間には明確な熱の通り道は存在しない。バックライト用のインバータ回路基板の脇に,熱の通り道とみられる個所が2本確認できる。「放熱対策は本当に万全なのか」,分解に立ち会った技術者たちは頭を抱える。

スピーカー

 液晶パネル・モジュールの外側部分に二つのスピーカーを搭載する。厚さは約30mmであり,テレビ用のスピーカーとしては薄い。最低限の強度を確保するためか,表示部表側の筐体に開けられた穴はスピーカーの大きさに対して小さい。「一般的なテレビと比べて,音質は見劣りするかもしれない。高音質を求める薄型化を優先させたのだろう」(あるテレビ・メーカーの技術者)。

チューナー部

 表示部と分離するチューナー部には,画像処理用のLSIや入出力端子,リムーバルHDD「iVDR」を格納するスロットなどを搭載する。表示部の信号処理基板と同様に,一般的な液晶テレビで採用している部品を採用しているようだ。表示部とHDMIケーブルで接続するため,基板上にHDMI送信用LSIを備える。あるテレビ・メーカーの技術者は,「表示部とチューナー部を分離することで,部品点数は増加する。薄型化を優先させたため,コスト増にはこだわらなかったのだろう」と推測する。 チューナー部の大きさは297mm×222mm×60mm。「無理に小型化しているという印象はない」(前述の技術者)。チューナー部の薄型化には手を着けず,表示部の薄型化に注力したとみられる。部品のメーカーと用途は日経エレクトロニクスの推定。

表示部全体の基板配置

 表示部背面の筐体を取り外すと,液晶パネル・モジュールの背面に基板類が整然と配置されていることが分かる。真横から見ると,すべての基板類の高さはそろっている。土台となるパネル・モジュールの面を基準にすると約13.6mmの高さだ。取り付けられている基板の中で,最も厚くなる部品を実装しなければならない電源基板に合わせて,ほかの基板類の高さも決めたものと推測できる。

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