COLLEGE 製造業の“本当”を探求
 

第4回:関門突破,いよいよ製品化,余勢をかって一気にレーザも

仲森 智博
2009/06/10 00:00
出典:日経エレクトロニクス、1995年3月13日号 、pp.169-173 (記事は執筆時の情報に基づいており、現在では異なる場合があります)
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高輝度青色発光ダイオード開発物語の最終回。第1回から第3回では,開発者の中村修二氏が入社してから初めて青色発光ダイオードが光るまでを追った。今回はいよいよ大団円。高輝度発光ダイオードが完成する。最初のGaN発光ダイオードは光ったが,暗かった。中村氏はpn接合型からダブルヘテロ構造への転換を決意する。ここからは速い。開発はトントン拍子に進み,ダブルヘテロ構造に不純物を入れて発光中心を設け,1cdの輝度を実現,製品化にこぎつけた。信号機など,応用機器も続々現れ始めた。

 1992年4月,米国から帰国した中村氏は,ダブルヘテロ構造の実現を目指し,InGaN膜の成長に没頭する(表1)。ダブルヘテロ構造をGaN発光ダイオードに導入すれば,輝度は格段に向上するはずだ注1)

表1 青色発光ダイオードの開発過程
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注1)この当時完成していたのは,pn接合型の発光ダイオードである。pn接合型は,p型とn型の半導体を接合させただけの,単純な構造になっている。pn接合に順バイアスを加えて電子を注入し,ホールに再接合するとき光が発生する。一方のダブルヘテロ構造の発光ダイオードは,発光層よりエネルギ・ギャップが大きい半導体層で発光層を挟み込んでいる。発光層と周囲の半導体層との接合が,両側ともヘテロ接合(異材料間の接合)になる。pn接合に順バイアスを加えるとき,注入されるキャリアはすべてバンドからバンドへ遷移(再接合)するわけではない。キャリアの大部分は,電極に流れ出してしまい,ムダになる。ダブルヘテロ型の場合,発光層のエネルギ・ギャップは周囲よりも小さくなっている。このため発光層にキャリアが閉じこめられ,再接合の確率が高くなる。このため,ダブルヘテロ構造にすればpn接合型より輝度を高くできる。

 同じころから,中村氏の研究グループに資金と人材が投入され始めた。社長の,製品化に対する意気込みの現れだった。GaN発光ダイオードの研究には,すでに億単位の額を投資してきた。日亜化学工業にしてみれば,清水の舞台から飛びおりるほどの決断である。それが,やっとの思いで光るところまでこぎつけた。それを一日も早く売れるものにしたい。投資を決めたものとして,社長の思いは至極当然なものだろう。

 しかしその思いが,中村氏の行く手をさえぎる大きな障害となった。社長は,少々暗くてもいいから,pn接合型の発光ダイオードを製品化したいとあせる。一方で中村氏は,pn接合型に見切りをつけている。研究を次のステップに進めたい。短期間で成果を出す自信はある。

中村修二劇場
地方企業の技術者が、青色LEDの発明で
科学界最高の栄誉を獲得するまでの全記録。

「本当の中村修二」に近づく
ノーベル物理学賞で科学者最高の栄誉を獲得した中村修二教授は今、何を思っているのか。過去のさまざまな場面で吐露した思い、専門記者の視点、世間の見方はどのようなものだったのか。現在・過去・未来をトレースすることが「本当の中村修二」に近づく唯一の方法だ。地方企業の技術者がノーベル賞を受賞するまでを当時の報道を中心につづった実録を書籍化。

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