携帯電話機メーカーにメリットある変化

 半導体とMEMSの融合がインパクトを与える事例として,携帯電話機向けのデバイスがある(図3)。携帯電話機向けデバイスは,単価下落が進んでいる中でも出荷数量の多さから,依然としてデバイス・メーカーの事業の中核を占める。

図3 MEMSが携帯電話機のコスト削減をもたらす
図3 MEMSが携帯電話機のコスト削減をもたらす
携帯電話機の製造にMEMSがもたらすインパクトを示した。マイクの写真は米Knowles Electronics社のデータ。カメラ・モジュールとRF回路の図はいずれも東芝のデータ。

 フィンランドNokia Corp.をはじめとする大手携帯電話機メーカーは,端末の部材コスト圧縮に加えて,製造コストの低減を進めている。このため,製造の自動化比率を高めようとし始めた。具体的には,携帯電話機向けプリント基板に搭載するすべての部品をハンダ・リフローによる自動実装に対応させる。これまでは,マイクとカメラ・モジュールのみが自動実装できなかった。

 このうちマイクについては,2003年ごろより自動実装可能になった(図3)。一部の携帯電話機メーカーが,リフローによる自動実装可能なマイクとして,MEMS技術によるSiマイクを採用するようになったことによる。そして「2008年内には,Nokiaなど大手携帯電話機メーカーも現在評価中のSiマイクを採用する可能性が高い」(国内のデバイス・メーカーの販売担当者)という。この変化を持ち込んだのは,耐熱性のあるSi薄膜である。従来のマイクのECM(erectret condenser microphone)ではセンサー部の薄膜(エレクトレット)の機能がリフロー時における高温で劣化していた。エレクトレットの代わりにSi薄膜を使うSiマイクはリフローの高温に耐える。

 カメラ・モジュールの自動実装化もここへ来てようやく具体化し始めた(図3)。既にNokiaが採用を始めており,今後は大手を含めた大半の携帯電話機メーカーが後に続きそうである。ここで採用のカギを握るのは耐熱性の高いレンズである。例えばSTは,MEMS加工技術を使った低コストの耐熱レンズを既に導入している。