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MUSEからデジタル・ハイビジョンへ,開発人口の差で劇的な逆転

アプリケーション編:テレビ

田中 正晴
2009/05/29 00:00
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 「ハイビジョン」は,国内における高精細テレビジョン「HDTV(high definition television)」の名称であり,日本が開発を主導した映像技術の象徴と位置付けられよう。NHK放送技術研究所による研究開発がスタートしたのは,東京オリンピックが開催された1964年のことである(図11)。目標となったのが「より臨場感のあるテレビ」の実用化だった。

図1 HDTV開発・実用化の流れ
本誌1994年5月9日号,p.135をベースに,その後の主要なトピックなどを加筆
[画像のクリックで拡大表示]

 当初は,「高品位テレビ」と名付けられた。臨場感を増すための手法として採用されたのが,高精細化と画面のワイド化である。精細度を高めることで,画面から人までの視聴距離が同じ場合に,より大画面にしても映像の粗さが目立たなくなった。この結果,視野に占める画面の割合が大きくなり,臨場感が増す。総走査線数が1125本のインタレース方式を採用した注1)。同様の理由でアスペクト比も16対9と,横長画面を採用した注2)。そして,映像の伝送技術として1983年に開発したのが,アナログ伝送方式と位置付けられる「MUSE」である。その後,NHKが局内であらためて名称を公募し,「ハイビジョン」に落ち着く。高精細でも低品位の番組は十分にあり得ることから名称が変更されたのである。

注1) 有効走査線数は1035本だった。現在のハイビジョン放送は,正方画素にするため1080画素。

注2) 暫定としては5対3,その後に映画との関連性も考慮し16対9になった。

開発スタートから40年

 今,研究開発がスタートして以来40年が過ぎ,先行技術であるNTSC放送の終了予定が日米でもようやく目前に近づいてきた(別掲の「次の出番をうかがうISDB-Tmm,携帯電話業界も巻き込む」参照)。この間,ハイビジョンは,実用化までの苦難の道を歩む。1980年代は,日本主導で進むMUSE-ハイビジョンに対し,欧州勢がHD-MACを推し,国際標準を競い合った。

 1990年代に入ると,ハイビジョンを実用化する上で大きな転換点が訪れる。デジタル・テレビ放送技術の登場である注3)。結局は,日本もMUSE方式の本放送は断念した。ただし,MUSEを断念したことと,ハイビジョンの価値とは切り離して考える必要がある。伝送方式のデジタルへ転換を図りながら,番組制作などは従来技術を発展させる形で,ハイビジョンの本格的な実用期に入ったのである。

注3) 最終的には,BSではPSK,地上波放送ではOFDMというデジタル変調方式と,高能率符号化方式MPEGの組み合わせ。

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